急性虫垂炎(盲腸)とは?症状や原因について解説

2023.08.04

  • LINE

監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

急性虫垂炎は、「盲腸」と表現されることもあるお腹の右下あたりに痛みを感じる病気を指します。一般的には10〜20歳代に多く見られますが、大人になってから急性虫垂炎を発症することもあります

急性虫垂炎になると、お腹周りの痛みだけでなく吐き気や嘔吐、食欲の低下がみられ日常生活に支障をきたします。さらに進行すると腹膜炎と呼ばれる生命にかかわるような状態に陥る場合もあります。
そのため、気になる症状があれば、早めに適切な検査や治療を受けることが重要です。

ここでは、医師監修のもと急性虫垂炎の症状や原因、治療法について詳しく解説していきます。

急性虫垂炎とは

急性虫垂炎とは、その名の通り「虫垂」という臓器に炎症が起きている状態を指します。
しばしば盲腸と呼ばれることがありますが、正確には盲腸の中の虫垂という部位に炎症が起きている状態を急性虫垂炎といいます。 

一般的に急性虫垂炎は10〜20歳代での発症が最も多いことが分かっていますが、幼児から高齢者までさまざまな年齢層で発症します。

急性虫垂炎は、手術をする時期を逃してしまうと、腹膜炎や穿孔性虫垂炎と呼ばれる重篤な合併症を引き起こし生命にかかわるような状態に陥る場合もあるため、早めに適切な治療を受けることが重要です。

急性虫垂炎の症状

虫垂炎の初期症状としては以下のようなことが挙げられます。

  • みぞおちやへそ周りの痛み
  • 吐き気、嘔吐
  • 倦怠感(だるさ)
  • 食欲の低下 など

これらの症状は胃腸炎の症状と非常によく似ているため、急性虫垂炎の初期では胃腸炎と判別がつきづらいことも少なくありません。

発症後しばらく経つと炎症が強くなり、右下腹部の強い痛みを感じる場合が多いのが、急性虫垂炎の特徴です。
また炎症が起こる病気のため、微熱や下痢が起こる場合もあります。さらに炎症が進行した虫垂炎では、歩くなどの振動だけでも右下腹部に痛みが起こるようになります。

急性虫垂炎の原因

急性虫垂炎はなんらかの原因で虫垂が閉塞することで発症します。

虫垂の閉塞が起こる原因としては以下のようなことが挙げられます。

  • 虫垂がねじれる
  • 虫垂の入口付近にあるリンパ濾胞が腫れる
  • 糞石(便のかたまり)が詰まる など

虫垂が閉塞するだけでなく大腸菌などの細菌による感染によっても急性虫垂炎を起こすことがあるため、便秘や腸内細菌の環境が悪い人もかかりやすいと言われています。

急性虫垂炎かもと思ったら

急性虫垂炎が疑われる症状があれば、すぐに病院を受診するようにしましょう。
急性虫垂炎の診断には、採血・腹部超音波検査・CT検査などが必要になるため、それらの設備が整った病院で診察してもらいましょう。

状況や原因によっては、手術や入院が必要になることもあります

ではどのような時に急性虫垂炎を疑うべきか、痛みの特徴や受診する目安も詳しく解説していきます。

急性虫垂炎の痛みの特徴

急性虫垂炎の痛みの特徴として、痛みの部位が移動することがあげられます。原因不明の腹痛がみぞおちに出現し、1日ほどで右下腹部へ移動する場合は虫垂炎を疑うためすぐに病院を受診しましょう。

病院を受診する目安は?

虫垂炎では、腹痛の他に発熱・吐き気・嘔吐・食欲低下・下痢などの症状があらわれます。

また右下腹部を押すと痛みがあり、さらにその部位を押して急に離すと痛みが増す「反跳痛」や、歩くなどで痛みが響くなどの症状が出るといった特徴があります。

上記の症状があらわれる場合にもすぐに病院を受診しましょう。

しかし、人によっては症状の重さが変わるため判断が難しい病気でもあります。
症状が軽くても病気や進行している場合があるため、気になる症状があればできるだけ早めに病院を受診しましょう。

急性虫垂炎の治療

急性虫垂炎の治療は「内科的治療」と「外科的治療」の2種類があります。

それぞれの特徴について詳しく解説していきます。

内科的治療

内科的治療とは主に薬剤での治療のことを指し、保存的治療とも呼ばれます。

急性虫垂炎では炎症が軽度な場合、炎症を抑えるための抗生物質を用いた治療が行われます。症状や病状に応じて、通院治療となる場合と入院治療が必要な場合があります。

通院治療・入院治療どちらも急性虫垂炎の治療中は食事の制限が必要です。腸を休める必要があるため基本的には絶食となりますが、医師によっては消化の良い食べ物であれば口にしても大丈夫だと指示されることもあります

抗生物質により炎症が治まれば、数日~1週間程度で症状が回復してきます。しかし効果がでない場合や反対に悪化する場合は外科的な治療、いわゆる手術が必要になります。

病院によっては、虫垂炎の再発防止のために内科治療と併用して手術を行うケースも多いです。

外科的治療

外科的治療とは手術のことであり、急性虫垂炎の治療では主に以下の3種類があります。

  • 腹腔鏡下虫垂切除術
  • 交差切開法
  • 下腹部正中切開法

上記のように急性虫垂炎では、開腹または腹腔鏡下で虫垂を切除する手術となります。

内科的治療で改善しない場合や虫垂の周りに膿がたまっている場合、穴があいてしまっている場合にはすぐに手術が必要になります。

また手のひらで腹部を軽く圧迫したときに、腹壁が緊張してかたくなっている症状(腹膜刺激症状)や炎症が強い場合にも手術の適応になります。

他にも、糞石の詰まりが原因となり急性虫垂炎を発症している場合は、抗生物質では治りにくいため、早期に手術が検討されます。

まとめ

急性虫垂炎は、子どもだけでなくどの年齢でも発症することがあります。

主な原因は虫垂の閉塞や大腸炎などの細菌感染によるものがあります。痛みの部位が移動し、吐き気や下痢などの消化器症状があらわれるのが特徴で、治療が早ければ早いほど予後がよく治療の負担も軽くなります。

気になる症状があれば、早めに病院を受診するようにしましょう。