メディコレNEWS|【医師監修】脂肪肝の原因と改善に必要なこと
監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。
脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまった状態を指します。成人の2〜3割が発症し、肝臓の病気の中で最も多くを占める病気です。特に肥満者の80%は脂肪肝がみられるといわれています。
脂肪肝は放置すると、肝硬変や肝癌などの病気に進行する可能性もあり、早めに適切な治療や生活習慣の改善をすることが重要です。
ここでは、医師監修のもと脂肪肝の原因や改善のために必要なことについて詳しく解説していきます。
脂肪肝とは
脂肪肝とは、余分な糖質や脂肪が中性脂肪に変化し、脂肪が過剰にたまり肝臓全体の30%以上を占めている状態のことを指します。
食べすぎや運動不足などの生活習慣の乱れによって発症する場合が多く、日本人の3人に1人が脂肪肝であるといわれています。
中性脂肪のたまりやすい肥満体型の方だけでなく、いわゆる痩せ型体型の方でも発症することがあります。
脂肪肝では初期症状は出にくいため、健康診断などを受診した際に初めて気が付くというケースも多くみられます。
脂肪肝は大きく2種類に分類され、アルコールの過剰摂取による「アルコール性脂肪肝」と飲酒歴がなくても発症する「非アルコール性脂肪肝」に分けられます。
ここでは脂肪肝を発症する仕組みを詳しくみていきましょう。
脂肪肝を発症するメカニズム
食事で摂った脂質や糖質は、小腸で吸収された後、肝臓で脂肪酸や中性脂肪に変化します。肝臓で中性脂肪となった後は、タンパク質と結合し筋肉や臓器に運ばれてエネルギーとして消費されます。
しかし過剰な食事の摂取または運動不足などにより、消費エネルギーよりも摂取エネルギーが上回っていると、使いきれない脂肪酸や中性脂肪が出てしまい、肝臓に蓄えられます。
これが脂肪肝を発症するメカニズムです。
またお酒の飲み過ぎによっても肝臓に中性脂肪がたまります。これは、アルコールが分解される際に、中性脂肪が合成されやすいためだと考えられています。
脂肪肝が進行するとどうなる?
脂肪肝は初期であれば自覚症状もほとんどなく、健康診断などで指摘されても病気の重大さを理解しにくいという方もいらっしゃるかもしれません。
脂肪肝になると徐々に肝臓の機能が低下していき、進行すると肝炎や肝硬変、肝がんなどの命にかかわる病気につながる恐れがあります。
初期の脂肪肝の段階でしっかりと脂肪肝の原因となっている生活習慣の改善を行えば、また健康な状態の肝臓に戻すことが可能です。健康診断などで脂肪肝と診断されたら、放置せずに早めに生活習慣の改善に取り組みましょう。
脂肪肝の原因
脂肪肝になる原因は主に以下のようなことが挙げられます。
- 食べ過ぎ
- 飲み過ぎ
- 運動不足
- 肥満
- 無理なダイエット
それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
食べ過ぎ
日本人の脂肪肝で最も多い原因が、食べ過ぎによるものです。
脂っこい食べ物の食べ過ぎで脂肪肝になりやすいとイメージしがちですが、糖質の食べ過ぎでも脂肪はたまりやすくなります。特に、果物は吸収されやすく脂肪に変わりやすい特徴があるため、脂肪肝と診断された方は果物の食べ過ぎには注意するようにしましょう。
飲み過ぎ
食べ過ぎに次いで、お酒の飲み過ぎも脂肪肝の原因となります。
アルコールの過剰摂取は、中性脂肪が合成しやすくなり、脂肪肝の分類の「アルコール性脂肪肝」にあたります。
運動不足
前述の通り、摂取カロリーが消費カロリーよりも上回ると脂肪肝の発症につながります。
また運動不足により筋肉が減ってしまうと、消費されるはずのエネルギーが使われず、脂肪がたまりやすくなってしまいます。
肥満
肥満体型の方は、特に脂肪肝になりやすい傾向があります。
前述したとおり、食事での栄養補給で余ってしまったものが脂肪となり蓄積されますが、肥満の場合は脂肪酸の燃焼が悪くなるためさらに中性脂肪がたまりやすくなります。
無理なダイエット
食べ過ぎだけでなく、無理なダイエットも脂肪肝の原因となることがあります。
無理なダイエットとは過度な食事制限や過剰な運動のことを指しますが、このような生活を続けていると、体は「飢餓状態」となってしまいます。飢餓状態になると身体中の脂肪が肝臓に送られ、エネルギーになろうとします。
しかし肝臓自体も栄養不良になっているため、エネルギーに変える力が弱まってしまいます。そのために脂肪がたまり、「栄養障害性脂肪肝」となります。
脂肪肝の改善のために必要なこととは?
脂肪肝の原因をふまえて、脂肪肝を改善するポイントについて解説していきます。
脂肪肝の改善が期待できるポイントは以下の4つです。
- バランスの良い食事
- 適度な運動を心がける
- アルコールの過剰摂取を控える
- 無理なダイエットは控える
それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
バランスの良い食事
脂肪肝を改善するためには、バランスの良い食事を心がけましょう。
脂肪肝は特に炭水化物や果物などの糖質が原因となりやすいため、食べ過ぎてしまっている方は減らす必要があります。
脂肪肝の改善には以下のような食材を意識して摂取するようにしましょう。
- 野菜類
- 海藻類
- 脂肪分の少ない肉や魚
- 大豆製品
- 卵 など
糖質・脂質をできるだけ控え、良質なタンパク質を摂取することを心がけましょう。
また食事内容を整えるだけでなく、「よく噛んで食べること」や「野菜から順番に食べること」も脂肪肝の改善には重要なポイントです。
適度な運動を心がける
運動をすることで、肝臓にたまった脂肪がエネルギー源に変わります。運動量が増えるほど、エネルギーとして消費されるため、脂肪が減っていき脂肪肝が改善します。
脂肪肝の改善には有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳)と軽めの筋トレ(スクワット、片足立ちなど)を組み合わせて行うことが効果的です。
1日30分以上の運動をできるだけ毎日継続するようにしましょう。
アルコールの過剰摂取を控える
脂肪肝の原因が飲酒によるものであれば、アルコール摂取量を減らすもしくは禁酒を心がけましょう。
肝硬変などの重篤な状態に進行する前に禁酒ができれば、病気の進行を抑えることができます。
無理なダイエットは控える
食事をせず激しい運動をするなどの無理なダイエットは控えましょう。
食べずに運動をすればするほど痩せていくかもしれませんが、体は飢餓状態と判断し、脂肪を蓄え始めます。バランスのとれた食事をしっかりと摂り、適度な運動を心がけましょう。
まとめ
脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態のことです。
脂肪肝には大きく2種類の分類があり「アルコール性」「非アルコール性」に分かれます。
脂肪肝の改善には、食事改善や適度な運動、過度な飲酒を控えるなど普段の生活習慣を改善していくことが必要です。
脂肪肝を放置していると、肝硬変や肝がんへ進行する場合もあるため早めに適切な対応をするようにしましょう。