【医師監修】脂肪肝と指摘されたら、放置するとどうなる?

2023.08.04

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監修医師:中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
兵庫医科大学卒業。米国内科学会上席会員、日本内科学会総合内科専門医などの資格を保有。
主な研究内容・論文は「生活習慣関連因子と大腸カプセル内視鏡検査」。

脂肪肝とは肝臓に脂肪が多くついた状態をいいます。日本人の3人に1人が脂肪肝といわれ、若い人でもなることがあります。

脂肪肝になっても自覚症状はほぼありません。しかし脂肪肝が進行すると、肝炎、肝硬変、肝がんなどより重い病気につながる恐れがあり、命に関わる場合もあります

脂肪肝が軽いうちにきちんと対処すれば早期改善につながります。健康診断で脂肪肝と指摘されたら、手遅れにならないよう放置せず早めに適切な治療を開始し、改善を目指しましょう。

ここでは医師監修のもと、脂肪肝の原因や改善方法について詳しく解説しています。

脂肪肝とは

脂肪肝とは、肝細胞の30%以上に脂肪がたまっている状態の肝臓のことを指します。
肝臓で作られる脂肪が必要以上に多いと、消費しきれない余分な脂肪が肝臓に蓄積され、脂肪肝となります。

肝臓は自覚症状が現れにくい臓器であるため、脂肪肝になっていることに自分では気がつきにくく、健康診断などを受けたタイミングで指摘されたという方が多いです。

脂肪肝と診断された場合は肝臓の機能が低下している状態ですので、悪化しないための対応が必要です。
ただし肝臓についた脂肪は比較的落としやすいため、適切に対処すれば脂肪肝を改善することができます。

脂肪肝の原因

摂取エネルギーが消費エネルギーより多いと、余分に作られた脂肪が肝臓にたまり、やがては脂肪肝となります。脂肪肝になる主な原因は、アルコールによるものとアルコール以外のものに分けられます

アルコール性脂肪肝

アルコールの分解時に中性脂肪が合成されやすいため、お酒を飲みすぎると肝臓に脂肪がたまり脂肪肝となります
特に日本酒であれば3合以上、ビールであれば大びん3本以上の飲酒が習慣化されている方に脂肪肝が見られる傾向があります。

非アルコール性脂肪肝

非アルコール性脂肪肝の原因としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 肥満
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 運動不足
  • 薬剤の影響(ステロイド剤など)
  • 無理なダイエット など

アルコール以外のものが原因で脂肪肝になることがあり、その原因の多くは過食です。
またメタボリックシンドロームがあると、脂肪肝を発症しやすくなります。日本では肥満人口の増加により非アルコール性脂肪肝が増えてきたといわれています。

その他、極端な食事制限やダイエットをすることで代謝異常を起こし、「低栄養性脂肪肝」になる可能性があるということが分かっています。

脂肪肝と指摘されたら

健康診断で脂肪肝と診断されても、重い病気ではないからと軽視してしまう方もいらっしゃるかもしれません。
前述の通り、脂肪肝は肝臓に脂肪がたまった状態を指し、脂肪肝の初期であれば自覚症状があらわれることはほとんどありません。

しかし進行すると命にかかわるような重い病気を引き起こすリスクが高まるということをしっかり認識しておくようにしましょう。

脂肪肝と指摘されたら、まずは現在の生活習慣を見直し、早めにしっかりと治療していくことが重要です。

脂肪肝を放置するとどうなる?

脂肪肝になると肝機能が低下し、放置すると肝炎や肝硬変、肝がんへと進行する恐れがあります。

また、狭心症や心筋梗塞などを引き起こすリスクもあります。命に関わる場合もあるため、自覚症状がないからと放置するのは大変危険だということをしっかりと理解するようにしましょう。

脂肪肝は治療が必要?

脂肪肝は進行すると肝炎、肝硬変、肝がん、心疾患など、より重い病気を引き起こすリスクが高くなるため、きちんと治療して脂肪肝を改善することが必要です。

命に関わる事態になる恐れがあるにもかかわらず、脂肪肝は自覚症状がほぼありません。だからこそ健康診断で脂肪肝を指摘されたら、放置せず医療機関に相談し、適切な治療をできるだけ早く開始することが大切です。

脂肪肝の改善方法

原因に応じた対処をすることで、脂肪肝を改善することができます。

脂肪肝は生活習慣病の一つともいわれるので、生活習慣を見直すことが改善につながります

肝臓についた脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪に比べて落としやすいのですが、生活習慣が元に戻れば再発する可能性があります。良い生活習慣を身につけて継続していくことが重要です。

アルコール性脂肪肝の改善方法

多量の飲酒が原因となるアルコール性脂肪肝の場合は、禁酒することが第一です。
禁酒することで肝臓の腫れが縮み、6週間程度で脂肪肝は改善されていきます。

脂肪肝が改善されたあとも、元の飲酒量に戻してしまっては、またすぐに脂肪肝になってしまいます。

一日のアルコール摂取量は20〜25g程度(ビール中瓶1本or日本酒1合orワイン2杯程度)を目安にし、休肝日を設けながら飲みすぎないように心がけましょう。

また疲労がたまっていたり、睡眠不足の状態が続いていると、内臓の働きが弱まります。しっかりと睡眠時間を確保し、十分な休養をとるようにしましょう。

非アルコール性脂肪肝の改善方法

アルコール以外が原因の非アルコール性脂肪肝の場合は、原因に応じた対策をとるようにしましょう。

食べ過ぎや肥満が原因の場合は、糖質の摂りすぎに注意し、バランスの良い食事を心がけましょう。肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病の改善が脂肪肝の改善につながります。

また定期的に有酸素運動や軽い筋トレを取り入れるようにしましょう。体重が7%減少すると非アルコール性脂肪肝炎が軽減するといわれています。

他にも、脂肪肝の原因となっている薬剤があれば、使用を中止します。ただし自己判断で薬の使用を中止することは厳禁です。必ず薬を処方した医師に脂肪肝と診断された旨を伝え、薬の服用についての判断を仰ぐようにしましょう。

まとめ

脂肪肝はメタボリックシンドロームに合併しやすく、肝臓に脂肪が多くたまった状態をいいます。肝臓は自覚症状が現れにくい臓器ですが、脂肪肝が進行すると肝炎、肝硬変、肝がん、心疾患を引き起こすリスクが高まります。

脂肪肝はほとんどの場合、禁酒や食事・運動など、発症原因に応じた生活習慣の見直しで脂肪肝を改善することができます。健康診断で脂肪肝と指摘されたら医療機関を受診し、できるだけ早く治療を開始することが大切です。早期発見・早期治療で脂肪肝の悪化を防ぎましょう。