診療内科にかかる目安や症状とは?診療費の目安を解説
監修医師:伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
専門領域は精神科(心療内科)、精神神経科、心療内科、 美容皮膚科、産業医。
寝つきが悪くて夜中も起きてしまう、出勤時間になるとお腹が痛くなる、食欲がなく食べたいと思わなくなったといった症状がありますか?それは「心の不調」のサインです。
この程度で病院に行っても良いのかと悩む方もいらっしゃるでしょうが、もしかしたらそれは治療が必要な状態かもしれません。一人で解決しようとせずに、病院で専門家の意見を聞いてみるのも解決の糸口になります。
この記事では、心療内科と精神科のちがいや心が不調な時の症状、心療内科での治療について解説しています。
心療内科と精神科のちがいは?
心に不調を感じた時に受診するのは、心療内科や精神科など、どの科が良いのか悩まれる方も多いでしょう。
この違いがわからないため、病院を受診することを決めても、診療科選びでのハードルがあり受診まで漕ぎ着けていない現状があります。
まずは、心療内科と精神科のちがいについてみていきましょう。
心療内科とは
心療内科は、ストレスや緊張などの要因による身体的症状を持つ方の治療をおこないます。
このような身体症状を呈するものを「心身症」と呼び、一般的な治療ではなく心理面での治療をしなければ改善が見込めません。
病気のみに焦点が当てられていた時代から、心の面も含めた全人的な治療を行うことの必要性が認識されるようになり、約50年前に心療内科は創設されました。1996年に心療内科を掲げることが認可されたことを機に、多くの病院で「心療内科」が設置されました。
心療内科ではもちろん、身体的データを十分に把握した上で、心理的な要因も見極めて医学的な治療を行います。
日本心身医学会・日本心療内科学会の合同で心療内科専門医制度がありますが、心療内科専門医になるには、基本として内科全般を見ることができる内科学会認定内科医でなければなりません。そして心身症の診療や論文・学会発表歴など細かく規定があります。
このことからも、心療内科が身体的、心理的両方の知識を持った医師により全人的に治療を行うことができる診療科であることがわかります。
精神科とは
精神科は心の症状や病気を治療する診療科です。
症状からどのような精神疾患であるのかを診断します。
対象とするものには不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状、病気としては発達障害、双極性障害、統合失調症、不安症、強迫症、PTSDなどがあります。
さらにアルコールや薬物依存なども精神科の分野です。
精神科にも、日本精神神経学会による精神科専門医制度がありますが、内科学会認定内科医であることは条件にありません。
こんな症状があったら心療内科へ
心が不調になると、体にさまざまな症状が出てきます。
誰しもストレスを抱えていますので、一時的に同様の症状が現れることもありますが、2週間以上続く時は、早めに心療内科を受診してください。
具体的には、以下のような症状が続く場合は、心療内科の受診を検討しましょう。
心の症状
まずは以下のような心の症状にあてはまるものがないかチェックしてみましょう。
- 不安
- イライラして怒りっぽくなる
- 急に泣き出す
- 気分が落ち込む
- やる気がなくなる など
睡眠障害
睡眠障害は心の不調を抱える多くの人に当てはまる症状です。
- 寝つきが悪い
- 夜中に目が覚めてから眠れない
- 早朝に目が覚める
- 眠り過ぎてしまう など
食に関する変化
心の不調がある方の多くは、食に関する変化も起こりやすくなります。
- 食欲がなく少ししか食べられない
- 食べたくない
- 美味しいと思わない
- 大量に食べてしまう など
体の症状
内科などを受診しても原因がわからず、以下のような症状が続いているときは、心療内科を受診してみてください。心理的な要因による症状かもしれません。
- 肩こり、頭痛
- 腹痛、腰痛
- 体がだるい
- 下痢や便秘
- めまい、耳鳴り
- 生理不順
- 体の痛み、発熱 など
日常生活への支障
心や体の症状により日常生活に支障が出ている場合も、早めに心療内科を受診するようにしましょう。
- 気分が落ち込み仕事を休みがちである
- 自宅にこもりがちで誰とも話をしたくない など
心療内科で行われる治療について
心療内科では、心理的な要因によって症状が出ている「心身症」に対して、心理面と身体面の両方からアプローチして治療をしていきます。
診察では、まず時間をかけて問診を行います。
内容は現在困っていることに関して、症状が出た時期や症状が悪くなる事柄、これまでの治療状況などを詳しく聞かれます。
さらに、生育歴や家族関係、仕事の内容や職場環境など、心理的・社会的に影響を与える事柄についても質問されます。
初めての問診で、全てうまく答えられなくても大丈夫です。
この問診では、心療内科医師との信頼関係を構築するという意味合いもあります。
診察を重ねる中で話を追加していっても問題ありませんので、堅苦しく考えずありのままの自分で話をしてください。
次に、身体的な面の診察です。
一般的な内科で行うような血液検査や尿検査、心電図などを、必要に応じて行います。
これら両方の情報から、心療内科医師が心身症の診断をして治療の方向性を決めていきます。
治療は主に薬物療法と心理療法が用いられます。
薬物療法
症状に合わせて、身体症状に対する治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、漢方薬などが処方されます。
心理療法
臨床心理士や公認心理師などの専門家とのカウンセリング、考え方などを見直して行動の変化を促す認知行動療法、家族を交えて話し合う家族療法などがあります。
診療費の目安
心療内科の受診は週1回から始まりますが、重症度に合わせ、週2〜3回、2週に1回などの頻度となり数ヶ月の通院が必要です。
心身症に対する治療は健康保険が適用されます。
3割負担の場合の診療費の目安は以下の通りです。
心療内科の診療費目安(3割負担の場合)
初診:約3,000~6,000円
再診:約1,000~3,000円
上記の他に、臨床心理士などのカウンセリングは保険診療には適用されませんので、全額自己負担となります。臨床心理士などのカウンセリングは、8,000〜15,000円程度の自己負担です。
まとめ
受診しても原因がわからない症状が続いている時や、睡眠障害、食欲低下、気分が落ち込みやる気が出ないなどの症状が2週間以上続いている時には、心療内科の受診をおすすめします。これらは心理的なことが要因となっている「心身症」かもしれません。そして、心身症として現われる心の不調をそのままにしていると、うつ病などの精神疾患につながる恐れがあります。
ご自身では「この程度の症状で…」と思うかもしれませんが、心療内科の医師が診ると治療が必要な状態かもしれません。お一人で解決せずに心療内科を受診してみてください。