「健康で快適な環境で仕事を」 産業医・甲斐沼孟ドクターの思い

2024.01.13

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株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、上場企業で産業医を務める甲斐沼孟先生にお話しを伺いました。

Profile
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業。国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部附属病院で心臓血管外科として勤務。その後、国家公務員共済組合連合会大手前病院では救急科としてキャリアを積む。現在は産業医として上場企業の従業員などの健康を守っている。

今後はハラスメント対策なども充実させたい、現役産業医の思いとは

――本日はお時間いただきありがとうございます!甲斐沼先生はどうして医者になられたんですか?

甲斐沼先生 根本的な動機として、医師になって世の中の人々のために役に立ちたいと思い、医師になりました。医師になって、病気で苦しむ患者さんを助けて、治したいという気持ちが強くあります。また、自分が子どものころによく病気で療養や入院を余儀なくされた際、不安や暗い気持ちになっていた自分に、医師である父や心優しい母などが看病してくれたことに対して、今でも深く感謝しています。もともと、人とたくさん接して、人助けするのが好きです。家族が医師をしていて身近に感じる職業でもありました。

――お父様が医師だったことも大きな影響があったのですね。現在の診療科に進んだきっかけはどういったものだったのでしょうか?

甲斐沼先生 私は医師として15年以上キャリアを積んできました。初期臨床研修を修了した後、消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参りました。また、地域の医療情勢を把握しながら救急医学診療を中心に地域医療に貢献してきた経緯もあります。そして、以前より産業医が「医療分野だけでなく、様々な分野と密接に関わりがあり、社会で働く人々に対してより直接的に貢献できる職業だ」と実感し、この仕事に大きな興味が湧いて、2023年から産業医としての活動を始めております。

――社会に働く人への貢献で現在は産業医として働いているのですね。普段の仕事ではどのようなことを行なっているんですか?

甲斐沼先生 日々の仕事は、主に産業保健業務を実施しています。各企業や会社の事業主や労働者に対して、さまざまな健康相談への対応、健康診断の事後対応、面接指導などを実施しています。それぞれの組織や労働者の健康課題を見つけて、健康的かつ高い生産性を維持することが目標です。毎日の生活のなかで、仕事業務をしている人々の様々な病気や健康の悩みに対して、豊富な経験と専門知識を活かして産業医として貢献しています。

――産業医の仕事をする上で大事にしていることはありますか?

甲斐沼先生 産業医は、基本的に労働者が健康に就労できるような健康支援措置を行う職業です。産業医の活躍場面として、健康診断とその結果に基づく就労判定措置、治療と仕事の両立支援、ストレスチェック制度や長時間労働者に対する面接指導などが挙げられます。産業医は労働者の健康管理などを行う役割を担っていると同時に、事業主や会社代表者との状況共有や就労配慮事項などに関して助言を行うことも期待されています。労働者が健康で快適な作業環境のもとで上司などに理解してもらいながら、順調に仕事が行えるように専門的立場から指導・助言するように普段から心がけています。  

――仕事をする上で健康で快適な環境が確保されるのは、とても重要ですね。先生は、現在チャレンジしたいことはありますか?

甲斐沼先生 近年、益々需要が高まっている産業医ですが、「働き方改革」によって、その重要性が注目されています。企業の期待に応えることができる産業医は意外と少なく、逆に企業の期待に応えることができる産業医への需要がこれまで以上に高まっています。産業医の仕事内容は、健康診断をはじめ、健康相談、メンタルヘルスに関する相談、長時間労働者への面接指導などと様々ですが、近年特にパワーハラスメント、セクシュアルハラスメントなどによる健康被害は増加していますので、今後はハラスメント対策なども充実させたいという思いがあります。

――先生が産業医としての仕事を通じて目指すものはなんですか?

甲斐沼先生 昨今においては、メンタルヘルスに関する相談件数も各企業において増加傾向にあるといわれています。労働者の健康管理や治療内容などに関する悩みも年々多様化しており、今後は益々専門性の高い知識や経験に基づいたアドバイスが産業医に求められています。また、相談内容そのものが個人だけの問題ではないといった場合に、それぞれの組織における問題点をいち早く抽出して、具体的な改善策を助言して組織に実行させる能力も必要であると痛感しています。さらには、会社の立場や視点に応じた健康経営度にコミットするアビリティーがますます求められているので、その期待に出来るだけ応えたいと考えています。

読者の方へ伝えたいメッセージ

――最後に、ここまで読んでいただいた方に伝えたいメッセージをお願いします。

甲斐沼先生 私自身は、現在に至るまで臨床医として日常診療をしながら、全国学会での学術発表や論文執筆、医療記事の監修執筆、ラグビーの救護業務など多角的な視点でさまざまな医療活動を積極的に実践してきました。心臓の病気や消化器疾患に関する専門知識を駆使して、引き続き産業医や公認心理師の国家資格を活用して精神疾患や心理的不調者に対するメンタルヘルス対策など各種問題解決に導けるように邁進していきたいと思います。