「内視鏡検査を受ける勇気を」 内視鏡専門医・中路幸之助ドクターの思い

2024.01.13

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株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、医療法人愛晋会中江病院の中路幸之助先生にお話しを伺いました。

Profile
中路 幸之助
1991年に兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年に医療法人協和会で勤務。2003年から医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターに所属している。専門分野はカプセル内視鏡、消化器内視鏡、消化器病。多くの学会活動に参加しており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員、米国内科学会上席会員となっている。

「ジェネラルマインド」を持つ医師でありたい、内視鏡専門医の思いとは

――本日はお時間いただきありがとうございます!中路先生はどうして医者になられたんですか?

中路先生 あまり機会はありませんが、時折「医師になった動機」を聞かれることがあります。私は医師の家系に育ったわけでもなく、また医師になった強い動機は特には思いあたりません。しかし、若くして亡くなった私の母親が病院で、白衣を着てさっそと廊下を歩く医師をみて、「あの人はすばらしい職業の人よ。大きくなればあのような人になりなさい」とよく私に言っていた記憶があります。今思い返せば、母親の影響があったようにも思われます。。

――お母様の言葉が医師になる1つのきっかけになったのですね。それでは、現在の診療科に進んだきっかけはどういったものだったのでしょうか?

中路先生 現在私は「消化器病・消化器内視鏡」を専門に診療させていただいております。この診療科を選んだ理由の一つに、もともと私自身が胃腸の調子が悪く、腹痛・下痢などで消化器内科に通院していたことが挙げられると思います。お腹の痛みが強く試験勉強に自信を失いかけたとき、「必ず出来る、大丈夫」と、医師に励ましていただいたことを思いだします。そういうこともあって自然にこの診療科に入っていったように思います。

――ご自身の通院経験が現在の診療科に進んだきっかけになったということですね。普段の臨床ではどのようなことを行なっているんですか?

中路先生 普段は消化器病・消化器内視鏡関連の診療以外に糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病・健診業務・新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス対応などを含めて幅広い診療に従事させていただいております。それに加え、指導施設として、他施設との消化器病関連の臨床共同研究に参加させていただいたり、自施設でも研究テ―マを設け学会発表や論文作成に積極的にあたっています。

――臨床で大事にしていることはありますか?

中路先生 内科は、複数の鑑別診断から、最とも疑われる疾患を選んで、適切な治療を選択していく過程を経ますので、病気の診断・治療には時間を要します。しかし、日々の診療で、患者さんの話を傾聴し、不安を取り除くことは常にできるとの気持ちで日々の診療を行っております。16世紀のフランスの外科医パレの言葉の「ときに治すことはできる、和らげることはしばしばできる、慰めることはいつでもできる。」をいつも心にとめております。

――患者の不安を取り除くことに重点を置く、患者ファーストな考えですね。先生は、現在チャレンジしたいことはありますか?

中路先生 現在、日本における大腸がんは増加傾向にあリます。便潜血による大腸がん検診の受診率・大腸内視鏡検査による2次検診率は低く、その原因として大腸内視鏡検査に対する痛みに関する不安や女性の場合の羞恥心などが挙げられています。大腸カプセル内視鏡検査は小さなカプセルを飲むだけで大腸を観察出来る検査で、痛みも恥ずかしさもありません。当院では以前より、積極的に大腸カプセル内視鏡検査を施行しており、このことで、検診に対するハードルを下げ、大腸ポリープや大腸がんの早期発見を目指しています。このことが、大腸がんの罹患数や死亡数の低下につながれば良いと考えております。また、内視鏡検査・治療が環境に与える影響は思いの他大きく、あまり聞きなれない用語ですが、海外では「グリーンエンドスコピー」と言い、CO₂削減のため、環境に優しい内視鏡検査が推奨されてきています。(参照:WGO = 世界胃腸病学機構の記述今後、内視鏡AIやカプセル内視鏡検査を用いることで、不必要な生検や処置を回避し、より環境にやさしい内視鏡診療ができる可能性があります。

――先生が臨床を通じて目指すものはなんですか?

中路先生 現在、医療の細分化が進み、どうしても自分の専門分野の診療や研究が中心となり「横」のつながりが希薄になりがちですが、常に他の分野にも積極的に関わっていく「ジェネラル・マインド」を持つ医師であることを目指しています。普段の自分の専門としていない診療にも関わっている中で、新たな臨床研究のテーマとなるヒントを得たりすることもあります。たとえで言えば「専門分野は内科全般のショートケーキの上に乗っているイチゴのようなもの」で、裾野を広くとる姿勢が重要であると考えています。

読者の方へ伝えたいメッセージ

――最後に、ここまで読んでいただいた方に伝えたいメッセージをお願いします。

中路先生 是非、皆さん「内視鏡検査を受ける勇気」を持ってみてください。特に大腸内視鏡検査は「一番受けたくない検査」にも取り上げられることもありますが、一生に一度大腸内視鏡検査を受けるだけでも大腸がんによる死亡のリスクを減らすことが可能です。自覚症状が無くても、50歳くらいをめどに一度は大腸内視鏡検査を受けてみてください。大腸内視鏡検査が受けにくい人は大腸カプセル内視鏡検査やCTコロノグラフィーなどの代わりの検査も可能となっています。