メディコレNEWS|【医師が使ってみた本音レビュー】ポケモンスリープ

2023.09.07

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

株式会社ポケモンは2023年7月20日、スマートフォン向け睡眠ゲームアプリ「Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)」をリリースし、大きな注目を集めています。

世界で最も平均睡眠時間が短いといわれる日本人。さらに日本人の4人に1人は睡眠障害があるといわれるほど、現代人はさまざまな睡眠に関する問題を抱えています。

慢性的な睡眠不足は集中力の低下など日中の活動に支障をきたす他、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病リスクを高めることが分かっています。

「自分ではしっかり眠っているつもりなのに日中の疲れがとれない」「早く寝ようと思っていてもつい夜更かししてしまう」このような悩みを抱えている方は、まずは自分の睡眠のパターンを知り、改善策を見つけていくようにすると良いでしょう。

ここでは、ポケモンスリープの「睡眠計測機能」に焦点を当てて、実際に医師が使ってみたレビューと共にポケモンスリープの睡眠改善効果についてご紹介していきます。

ポケモンスリープはどんなアプリ?

ポケモンスリープは「朝起きるのが楽しみになる」をコンセプトにした睡眠ゲームアプリです。

現在睡眠管理ができるアプリはさまざまなものがありますが、中でもポケモンスリープはゲームを行いながら、毎日の睡眠を「楽しくする」ための、新しいタイプのアプリです。

ポケモンスリープの使い方

夜寝る時にアプリを起動し、枕元にスマートフォンを置いたまま眠ることで、以下の睡眠データを記録することができます。

  • 睡眠時間
  • 寝付くまでにかかった時間
  • 睡眠タイプ(「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」「特徴なし」)
  • 睡眠環境音録音
  • 睡眠メモ(プレミアムパス加入時の機能)

さらに「睡眠導入BGM」「眠りが浅い時に起こしてくれるスマートアラーム機能」で睡眠リズムを整えるためのサポート機能もあります。

その日の睡眠時間と睡眠タイプによって、さまざまなポケモンが集まります。たくさん眠れば眠るほど、色々なポケモンの寝顔を集められ、ポケモン寝顔図鑑の完成をめざします。

また昼は、仲間にしたポケモンから「きのみ」をもらい、カビゴンを育てることができます。

このようにポケモンスリープは「夜」しっかりと睡眠をとり、「朝」になったらポケモンたちの寝顔を観察し、「昼」にカビゴンを育成する、という1日のサイクルの中でさまざまな楽しみ方ができるアプリとなっています。

睡眠計測の仕組み

ポケモンスリープは他の睡眠計測アプリと同様に、スマートフォンに搭載されている「加速度(モーション)センサー」や「マイク機能」を利用して、睡眠を測定しています。

枕元にスマートフォンを置いたまま眠ることで、睡眠中の寝がえりやいびきなどを自動的に計測してくれます。

画像引用:Pokémon Sleep公式サイトより

ポケモンスリープは、スマートフォンを裏返しに置いておくことで自動的に低電力モードになりますが、就寝中にバッテリー切れにならないように、充電器をさしたまま使用することが推奨されています。
また株式会社ポケモンが販売している「ポケモンGOプラス+」と連携することで、スマートフォンを起動しなくても睡眠計測を行うことが可能になります。

ポケモンスリープ、医師が使ってみた!

今回は、甲斐沼 孟先生に実際にポケモンスリープを使っていただき、メリットデメリットやポケモンスリープはどんな人におすすめか、教えていただきます。

そもそも「良い睡眠」とは?

睡眠には二つの種類があると言われています。

一つ目は「レム睡眠」と呼ばれ、体そのものは休んでいる状態だけれども脳や深在意識は働いているという特徴があり、比較的目覚めやすい浅い眠りのことを意味します。
このレム睡眠時には、脳の中ではどのような働きをしているかというとそれまでの記憶を固定化したり体験した感情や情報などを整理しています。
夢を見るフェーズもレム睡眠のときであり、日中に精神的なストレスが多く抱えることになればレム睡眠の時間帯が増えると言い伝えられています。

一方で、脳が深く休んでいる「ノンレム睡眠」は、その眠りの深度でレベルがステージ1から4段階に分類でき、そのなかでステージ3と4の状態になれば、なかなか簡単に目覚めない深い眠りになります。
このノンレム睡眠の時間帯では、成長ホルモンを促して肉体を成長させたりけがをした際には皮膚や組織の修復に関与したり、免疫力を維持することなどに関係しています。
日々の生活の中で、肉体的なストレスが多くかかっている場合にはこのノンレム睡眠が相対的に増える理屈になっています。

この2種類の「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」は一晩の中でも数回にかけてお互いに時間帯が繰り返されると言われています。

この繰り返しによって、肉体と脳の双方が効率的に休めることができ、それらを通じて日中のストレスに対する生理的防御反応を示して、身体的かつ精神的な健康状態のメインテナンスにおおいに役立っていると考えられているのです。

睡眠時間については諸外国で事情が異なるかとは思いますが、日本人の場合には平均して約7時間前後と言われていますが、中には日本人でも数時間程度の睡眠時間のみで毎日生活している方もいます。

つまり、適切な睡眠時間という点でいうとそれぞれで若干の個人差があり、数時間より少なくても自分のペースでスムーズに活動できる人もいる反面、数時間程度よりはるかに長い時間をかけて睡眠時間を確保して眠らなければ不調を訴えるという方もいるのです。

今回、実際にポケモンスリープを活用することで、主に自分の睡眠時間の規則正しさと長さの2項目についてアプリ内で評価されて、睡眠後の健康状態やコンディションを整えるための参考情報になったと考えられます。

睡眠リズムを適切に整えるために、アプリならではの爽やかな音楽が流れる睡眠を導入しやすくするBGMの機能も付いていますし、睡眠グラフの浅いステージで利便的に起こしてくれるスマートアラームなど画期的なツールによって、睡眠をサポートしてくれます。

日々の睡眠データをもとに、その日の睡眠タイプを診断してくれるところが興味深く、「うとうと」、「すやすや」、「ぐっすり」、「特徴なし」のどれかに分類されて、自分の熟眠感や浅い眠りの感覚とのリンクがしやすくなります。


画像引用:Pokémon Sleep公式サイトより

ポケモンスリープのメリット・デメリットは?

ポケモンスリープの長所は、何と言っても枕元にスマートフォンを置くだけで簡単に自分の睡眠時間や寝付くまでにかかった時間、睡眠環境音などの現況を計測できるところです。

初期設定をして、スマートフォンを枕元において、眠るだけで、自分の睡眠の質や時間などが計測されて、睡眠後に自分の眠りに関連する状態をフィードバックすることができます。

ポケモン社が提供している睡眠計測アプリ「Pokemon Sleep(ポケモンスリープ)」の公式サイトでは、実際に睡眠計測をする際、「スマートフォンは電源をつないだまま」を推奨しています。

睡眠計測する際に、携帯を充電したまま放置することは、バッテリーの消耗につながるというデメリットが挙げられます。

スマートフォンが満充電された状態が続くと、携帯のバッテリーへの負荷が増して劣化を早める恐れがあるため、バッテリーの劣化につながることは避けられない事象であると考えられます。

また、睡眠計測中は、スマートフォンを布団の上に置きっぱなしにすることで、充電中のスマートフォンが発熱し、低温やけどをしたり、最悪の場合発火したりする危険性も否定できません。

こんな睡眠に注意!

計測した睡眠データのなかで、就寝の途中に何度か浅い眠りが続いてしまい、中途覚醒パターンになって、生活リズムが昼夜逆転してしまうことが懸念されるポイントのひとつになります。

「夜中に何度も目が覚めて眠りの質が悪い」、あるいは「眠りたいのにどうしても途中で起きてしまって長時間続けて眠れない」という悩みを持つ方は少なからずいらっしゃるかと思います。

ある人が日常的に睡眠時間を満足にとっているにもかかわらず、「どうしても夜中寝ているときに一度のみならず数回目が覚めてしまう」などといった症状を訴える場合には、その背景には色々な理由で良質な睡眠が確保できていないと考えられます。

特に、いったん眠りにつけたとしてもその後に何度も意図せずに目が冴えて覚めてしまう、あるいは目が覚めてしまった後にいっこうに再度眠れない際には、「中途覚醒」と呼ばれる不眠症に該当すると考えられます。

不眠症のなかでも、「中途覚醒」は良質な夜間帯の睡眠を取ることができずに、ひどい場合には仕事や学業、家庭生活など日中昼間において様々な機能障害を呈する状態になります。

不眠症のなかでも、「中途覚醒」は良質な夜間帯の睡眠を取ることができずに、ひどい場合には仕事や学業、家庭生活など日中昼間において様々な機能障害を呈する状態になります。

この状態が継続されると日中の眠気や倦怠感など身体の不調が起こって仕事や家事の生産性や効率性が低下して生活に支障をきたすことが知られています。

もし夜に目が覚めてなかなか寝付けないという場合には、早めに自らが取り組めるセルフケア対策を実行するとともに、ポケモンスリープを活用して自分の睡眠サイクルを知ることから始めて、不眠症改善の一歩を踏み出すことが重要な観点となります。

ポケモンスリープはどんな人におすすめ?

睡眠というものは単純に睡眠時間の長さだけではなく睡眠そのものの質がむしろ重要であると考えられています。

睡眠に関して以下のよう悩みがあるという方は、ポケモンスリープを使って睡眠計測をしてみることをおすすめします。

☑ 寝付くまでに時間がかかる
☑ 「早く眠らないと」と思えば思うほど目が冴えてしまう
☑ しっかり寝たつもりなのに、朝起きると疲れがとれてない
☑ 途中で起きてしまって長時間立て続けに眠れない
☑ 家族やパートナーなどにいびきを指摘された


睡眠している際中に呼吸が止まりそうになる低呼吸、あるいは実際に数秒間以上に渡って呼吸が止まる無呼吸の合計回数が1時間につき5回以内の場合、かつ夜間を含めて睡眠障害を認めない際には、単にいびきの音が大きく「単純性いびき症」と考えられています。

睡眠中に発生するいびきの音は、通常では寝ている際中に下顎部の筋肉が弛緩することによって空気の通り道が細くなりいびき音が鳴ると言われていますが、単純性いびき症の場合には、病的なレベルで気道や喉が狭くなっているわけではありません。
単純性いびき症では、睡眠中に酸素飽和度が低下することも考えられないために、「睡眠時無呼吸症候群」に典型的な日中の眠気などの症状は基本的には認められません。

一方で、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:略称SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まる、あるいは浅くなって周囲の方からいびきをよく指摘される、夜間の睡眠中に頻繁に目が覚める、日中の眠気などを経験する病気と考えられています。

本疾患では、夜間における深い睡眠が妨げられることによって多大なストレスが蓄積されることによって、血糖値やコレステロール値が高くなることで様々な生活習慣病やメタボリック・シンドローム症候群が引き起こされやすくなります。

夜間の睡眠途中で何回も呼吸が止まって、大きないびきを認める人は、高血圧や脳梗塞などを合併する危険性が上昇すると考えられていますので、ポケモンスリープを活用して睡眠環境音やいびき音が聴取できるかどうかを実際にアセスメントしてみましょう。

まとめ

「Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)」は、ゲームを楽しみながら、毎日の睡眠計測ができるスマートフォンアプリです。

睡眠不足は日中の眠気や集中力の低下を引き起こすだけでなく、さまざまな生活習慣病リスクを高める恐れがあります。

しっかり眠っているはずなのに疲れがとれない、夜中に何度も目が覚めてしまう、家族にいびきを指摘された等、日々の睡眠に関する悩みを抱えている方はぜひ一度、ポケモンスリープを使って自身の睡眠サイクルを見直してみてはいかがでしょうか。