パーキンソン病の初期症状と治療について

パーキンソン病の初期症状と治療について

2023年10月27日
パーキンソン病の初期症状と治療について

パーキンソン病の初期症状と治療について

2023年10月27日
メディコレマーク

この記事はメディコレ監修医師による監修済みです。

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パーキンソン病とは、日本神経学会によると、10万人あたり150人、すなわち1000人1.5人程度の割合で患者さんが存在している病気です。

高齢者になるにつれ患者数が増えるといわれていますが、若い人に起こることもあります。本記事では、パーキンソン病について、原因や初期症状、治療法、費用について解説します。

パーキンソン病とは、日本神経学会によると、10万人あたり150人、すなわち1000人1.5人程度の割合で患者さんが存在している病気です。

高齢者になるにつれ患者数が増えるといわれていますが、若い人に起こることもあります。本記事では、パーキンソン病について、原因や初期症状、治療法、費用について解説します。

パーキンソン病とは

<strong>パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、脳の異常により体の動きに障害がでる病気です。

パーキンソン病はゆっくりと進行することが特徴です。以前は、発症したら10年後には寝たきりになるとも言われていましたが、近年は効果的な治療薬が複数出ており、長い間よい状態を保つことができ、寝たきりになることは少ないです。早期発見、早期の治療開始が大切です。

パーキンソン病の原因

人は体を動かすために、脳の黒質にある神経細胞からドパミンという物質を放出して、全身の筋肉に指令を出します。この神経細胞が減少するとドパミンが減ってしまい、パーキンソン病になります
ドパミンを出す神経細胞が減少する原因は完全に明かされてはいませんが、神経細胞の中にαシクレインというタンパクがたまることによると考えられています。

遺伝する家族性パーキンソン病も発見されていますが、ほとんどの場合が遺伝せず、その人のみに起こる孤発性です。

しかし、孤発性の場合も、多くの遺伝因子と環境因子がお互いに関係して発症すると考えられています。環境因子として、農薬や殺虫剤、鉄や銅、鉛などの金属がパーキンソン病発症に関与しているという研究もあります。

パーキンソン病の初期症状

パーキンソン病には特徴的な4つの症状があります。

  • 振戦
    安静にしている時に、手足が震えます

  • 動作緩慢
    歩く時の歩幅、腕の振りが小さくなり、歩くスピードもゆっくりになります

  • 筋固縮
    筋肉が固くなり、腕や足をスムーズに動かしにくくなります
    顔の筋肉もこわばり、無表情になります

  • 姿勢反射障害
    バランスをとりにくくなり、転びやすくなります
    歩いていて止まれなったり、方向転換をするのが難しくなったりします



上記のような運動症状のほか、非運動症状も知られています。

例えば、便秘や頻尿、冷や汗などの自律神経症状、物忘れがひどいなどの認知機能障害、不眠や眠気などの睡眠障害、疲れやすい、うつ、不安症状、においを感じにくくなる、などがあります。

いずれの症状も初期から出現する可能性があります。パーキンソン病は高齢の方に多いため、加齢による症状と勘違いして、診断が遅れてしまう場合もあるでしょう。

おかしいと思ったらすぐに病院を受診することをおすすめします。

パーキンソン病とパーキンソン症候群の違い

パーキンソン症候群は、脳内のドパミンが減ることによりパーキンソン病と似た症状が出現しますが、パーキンソン病ではないもののことをいいます。

パーキンソン症候群には、脳卒中の後遺症として、もしくは薬剤の副作用として起こるものがあります。また、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などの珍しい脳の病気で起こります。

脳卒中や薬剤によるものはパーキンソン症候群と特定しやすいですが、その他のパーキンソン症候群は、パーキンソン病との区別が非常に難しいです。

パーキンソン症候群は進行が早い、パーキンソン病に使用するレボドパ製剤は効きにくい、認知機能障害や立ち眩み、排尿障害などの自律神経症状が早くからでることなどが知られています。疑わしい症状を自覚したら、脳神経内科など専門の先生に診てもらうことが必要です。

パーキンソン病の治療と費用

<strong>パーキンソン病の治療と費用

パーキンソン病の治療は薬物治療と手術療法に分かれます。ここでは治療の他、治療の費用も解説します。

薬物療法

現時点ではパーキンソン病を治す薬は存在せず、すべて症状を和らげる対処療法です。薬は多くの種類があり、患者さんの状態に合わせて必要なものを組み合わせて使用します。

基本とされる薬はレボドパ製剤とドパミン受容体作動薬です。

その他、ドパミンの効果を高めるもの、症状を抑えるものなどがあります。これらは基本薬と併用して使用することが多いです。

レボドパ製剤

吸収されて脳の中でドパミンになり、不足しているドパミンを補います。
レボドパやドパミンの分解を抑える成分も配合している製品もあります。

製品名:ドパストン散、メネシット配合錠、デュオドーパ配合経腸用液、マドパー配合錠、スタレボ配合錠など

ドパミン受容体作用薬

ドパミンの刺激を受ける部分(ドパミン受容体)に直接作用します。
錠剤だけでなく貼り薬や注射もあります。

製品名:ペルマックス錠、ビ・シフロール錠、レキップ錠、ハルロピテープ、アポカイン皮下注など

手術療法

病気が進行し、薬物治療の効果が見られなくなってきたときに行われるのが手術療法です。こちらもパーキンソン病を治すものではなく、症状を和らげるものです。

普及している治療方法は、脳深部刺激法(DeepBrainStimulation:DBS)というもので、保険適応となっています。

脳の深いところに細い電線を刺し、電線に電気信号を送る電極を胸に埋め込みます。見た目は変わりませんが、手術後は定期的に機器の調整やバッテリー交換が必要です。特殊な技術が必要なため、実施できる施設が限られています。

その他、外科療法として注目されているのが、MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)です。これは原因となる脳の部分に超音波を当てて凝固させ、ふるえなどの運動症状を和らげます。手術をする必要がないため、患者さんの負担は軽くすみます。2020年に保険適応になりましたが、実施できる施設は手術と同様、限られています。

パーキンソン病の治療費

パーキンソン病は指定難病のため、重症度により医療費助成制度が利用できます。パーキンソン病の対象条件は「ホーン・ヤールの重症度分類3度以上で、生活機能障害度2度以上の方」です。

ホーン・ヤール重症度分類、生活機能障害度はいずれもパーキンソン病の重症度を表すのに広く使われる指標です。

ホーン・ヤール重症度3度は「小刻みに歩く、すくみ足などがみられる。転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる」生活機能障害度2度は「日常生活、通院に部分的な介助が必要になる」です。

該当すると、自己負担額が医療費の2割まで、もしくは自己負担額上限までとなり、それ以上の医療費は助成されます。自己負担上限額は1ヶ月あたり0〜30,000円と、所得に応じて異なります。

また、重症度の対象条件に当たらない、ホーン・ヤール重症度1~2度、生活機能障害度1度の方も、医療費総額が33,330円を超える月が1年に3回以上ある場合は医療助成の対象となります。

診断された段階で病院からも案内があると思いますが、パーキンソン病は医療費助成が受けられることを覚えておくとよいでしょう。

まとめ

パーキンソン病は、脳の神経細胞が減少してドパミンが少なくなり、体の動きに障害をきたす病気です。高齢者に多い病気で、症状を自覚しても加齢によるものと思い込み、受診、診断が遅れる場合があります。現在はさまざまな治療があり、早く治療を開始すれば、変わらない日常を長く過ごすことができる可能性があります。おかしいと思ったらまずはかかりつけ医、もしくは脳神経内科専門医を受診しましょう。

パーキンソン病とは

<strong>パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、脳の異常により体の動きに障害がでる病気です。

パーキンソン病はゆっくりと進行することが特徴です。以前は、発症したら10年後には寝たきりになるとも言われていましたが、近年は効果的な治療薬が複数出ており、長い間よい状態を保つことができ、寝たきりになることは少ないです。早期発見、早期の治療開始が大切です。

パーキンソン病の原因

人は体を動かすために、脳の黒質にある神経細胞からドパミンという物質を放出して、全身の筋肉に指令を出します。この神経細胞が減少するとドパミンが減ってしまい、パーキンソン病になります
ドパミンを出す神経細胞が減少する原因は完全に明かされてはいませんが、神経細胞の中にαシクレインというタンパクがたまることによると考えられています。

遺伝する家族性パーキンソン病も発見されていますが、ほとんどの場合が遺伝せず、その人のみに起こる孤発性です。

しかし、孤発性の場合も、多くの遺伝因子と環境因子がお互いに関係して発症すると考えられています。環境因子として、農薬や殺虫剤、鉄や銅、鉛などの金属がパーキンソン病発症に関与しているという研究もあります。

パーキンソン病の初期症状

パーキンソン病には特徴的な4つの症状があります。

  • 振戦
    安静にしている時に、手足が震えます

  • 動作緩慢
    歩く時の歩幅、腕の振りが小さくなり、歩くスピードもゆっくりになります

  • 筋固縮
    筋肉が固くなり、腕や足をスムーズに動かしにくくなります
    顔の筋肉もこわばり、無表情になります

  • 姿勢反射障害
    バランスをとりにくくなり、転びやすくなります
    歩いていて止まれなったり、方向転換をするのが難しくなったりします



上記のような運動症状のほか、非運動症状も知られています。

例えば、便秘や頻尿、冷や汗などの自律神経症状、物忘れがひどいなどの認知機能障害、不眠や眠気などの睡眠障害、疲れやすい、うつ、不安症状、においを感じにくくなる、などがあります。

いずれの症状も初期から出現する可能性があります。パーキンソン病は高齢の方に多いため、加齢による症状と勘違いして、診断が遅れてしまう場合もあるでしょう。

おかしいと思ったらすぐに病院を受診することをおすすめします。

パーキンソン病とパーキンソン症候群の違い

パーキンソン症候群は、脳内のドパミンが減ることによりパーキンソン病と似た症状が出現しますが、パーキンソン病ではないもののことをいいます。

パーキンソン症候群には、脳卒中の後遺症として、もしくは薬剤の副作用として起こるものがあります。また、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などの珍しい脳の病気で起こります。

脳卒中や薬剤によるものはパーキンソン症候群と特定しやすいですが、その他のパーキンソン症候群は、パーキンソン病との区別が非常に難しいです。

パーキンソン症候群は進行が早い、パーキンソン病に使用するレボドパ製剤は効きにくい、認知機能障害や立ち眩み、排尿障害などの自律神経症状が早くからでることなどが知られています。疑わしい症状を自覚したら、脳神経内科など専門の先生に診てもらうことが必要です。

パーキンソン病の治療と費用

<strong>パーキンソン病の治療と費用

パーキンソン病の治療は薬物治療と手術療法に分かれます。ここでは治療の他、治療の費用も解説します。

薬物療法

現時点ではパーキンソン病を治す薬は存在せず、すべて症状を和らげる対処療法です。薬は多くの種類があり、患者さんの状態に合わせて必要なものを組み合わせて使用します。

基本とされる薬はレボドパ製剤とドパミン受容体作動薬です。

その他、ドパミンの効果を高めるもの、症状を抑えるものなどがあります。これらは基本薬と併用して使用することが多いです。

レボドパ製剤

吸収されて脳の中でドパミンになり、不足しているドパミンを補います。
レボドパやドパミンの分解を抑える成分も配合している製品もあります。

製品名:ドパストン散、メネシット配合錠、デュオドーパ配合経腸用液、マドパー配合錠、スタレボ配合錠など

ドパミン受容体作用薬

ドパミンの刺激を受ける部分(ドパミン受容体)に直接作用します。
錠剤だけでなく貼り薬や注射もあります。

製品名:ペルマックス錠、ビ・シフロール錠、レキップ錠、ハルロピテープ、アポカイン皮下注など

手術療法

病気が進行し、薬物治療の効果が見られなくなってきたときに行われるのが手術療法です。こちらもパーキンソン病を治すものではなく、症状を和らげるものです。

普及している治療方法は、脳深部刺激法(DeepBrainStimulation:DBS)というもので、保険適応となっています。

脳の深いところに細い電線を刺し、電線に電気信号を送る電極を胸に埋め込みます。見た目は変わりませんが、手術後は定期的に機器の調整やバッテリー交換が必要です。特殊な技術が必要なため、実施できる施設が限られています。

その他、外科療法として注目されているのが、MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)です。これは原因となる脳の部分に超音波を当てて凝固させ、ふるえなどの運動症状を和らげます。手術をする必要がないため、患者さんの負担は軽くすみます。2020年に保険適応になりましたが、実施できる施設は手術と同様、限られています。

パーキンソン病の治療費

パーキンソン病は指定難病のため、重症度により医療費助成制度が利用できます。パーキンソン病の対象条件は「ホーン・ヤールの重症度分類3度以上で、生活機能障害度2度以上の方」です。

ホーン・ヤール重症度分類、生活機能障害度はいずれもパーキンソン病の重症度を表すのに広く使われる指標です。

ホーン・ヤール重症度3度は「小刻みに歩く、すくみ足などがみられる。転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる」生活機能障害度2度は「日常生活、通院に部分的な介助が必要になる」です。

該当すると、自己負担額が医療費の2割まで、もしくは自己負担額上限までとなり、それ以上の医療費は助成されます。自己負担上限額は1ヶ月あたり0〜30,000円と、所得に応じて異なります。

また、重症度の対象条件に当たらない、ホーン・ヤール重症度1~2度、生活機能障害度1度の方も、医療費総額が33,330円を超える月が1年に3回以上ある場合は医療助成の対象となります。

診断された段階で病院からも案内があると思いますが、パーキンソン病は医療費助成が受けられることを覚えておくとよいでしょう。

まとめ

パーキンソン病は、脳の神経細胞が減少してドパミンが少なくなり、体の動きに障害をきたす病気です。高齢者に多い病気で、症状を自覚しても加齢によるものと思い込み、受診、診断が遅れる場合があります。現在はさまざまな治療があり、早く治療を開始すれば、変わらない日常を長く過ごすことができる可能性があります。おかしいと思ったらまずはかかりつけ医、もしくは脳神経内科専門医を受診しましょう。

甲斐沼 孟先生
甲斐沼 孟
(上場企業産業医)
医師のコメント

パーキンソン病とは、通常では振戦、動作緩慢、筋強剛(あるいは筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)などを主な症状とする病気です。ドパミン神経細胞が減少するため少なくなったドパミンを補う治療が一般的です。ドパミン自体を飲んでも脳へは移行しないとされているために、ドパミン前駆物質であるL-dopa薬を服用します。他にも、アセチルコリン受容体に作用する抗コリン薬、グルタミン酸受容体に作用するアマンタジン、アデノシン受容体に作用するイストラデフィリン、シグマ受容体に作用するゾニサミドなどが使用薬として挙げられます。また、内服治療のみならず手術治療が行われることがあります。手術療法は脳内に電極を入れて視床下核を刺激する方法が最もよく行われています。視床下核は運動機能を抑制していると考えられ、この部位を刺激して視床下核の機能を麻痺させると運動の抑制機構が解除されて体が動きやすくなると言われています。そして、日常生活において自己転倒による骨折や他の病気を罹患しないことはパーキンソン病の治療経過にとても大事な要素となります。心配であれば、脳神経内科医やパーキンソン病専門外来を受診して相談しましょう。

医師のコメント

甲斐沼 孟先生
甲斐沼 孟
(上場企業産業医)

パーキンソン病とは、通常では振戦、動作緩慢、筋強剛(あるいは筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)などを主な症状とする病気です。ドパミン神経細胞が減少するため少なくなったドパミンを補う治療が一般的です。ドパミン自体を飲んでも脳へは移行しないとされているために、ドパミン前駆物質であるL-dopa薬を服用します。他にも、アセチルコリン受容体に作用する抗コリン薬、グルタミン酸受容体に作用するアマンタジン、アデノシン受容体に作用するイストラデフィリン、シグマ受容体に作用するゾニサミドなどが使用薬として挙げられます。また、内服治療のみならず手術治療が行われることがあります。手術療法は脳内に電極を入れて視床下核を刺激する方法が最もよく行われています。視床下核は運動機能を抑制していると考えられ、この部位を刺激して視床下核の機能を麻痺させると運動の抑制機構が解除されて体が動きやすくなると言われています。そして、日常生活において自己転倒による骨折や他の病気を罹患しないことはパーキンソン病の治療経過にとても大事な要素となります。心配であれば、脳神経内科医やパーキンソン病専門外来を受診して相談しましょう。

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