【医師監修】加齢に伴う心身の不調、男性更年期障害かも?

2023.04.19

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監修医師:平澤 陽介(東京医科大学病院)
北海道大学医学部医学科卒。日本泌尿器科学会専門医/指導医・日本内分泌学会専門医などの資格を保有。

加齢とともに、「疲れやすくなった」「イライラしやすい」「性欲がなくなってきた」などの心身の不調に悩まされていませんか?これらの症状は、もしかしたら「男性更年期障害」によるものかもしれません。

男性更年期障害は、医学用語ではLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。「更年期障害」というと女性特有のものだと思っている人も少なくないかもしれません。しかし近年では、女性だけではなく男性も更年期障害を発症する可能性があることが分かってきました。

この記事では、男性更年期障害の症状や治療法について、医師監修のもと詳しく解説していきます。

男性更年期障害とは

男性更年期障害とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる心身の不調を指します。

男性更年期障害の原因

男性更年期障害の主な原因は、加齢による男性ホルモンの低下にあります。男性ホルモンは一般的に20代をピークに、加齢とともに分泌量が減っていきます。個人差はありますが、多くは40~50代頃から、男性更年期障害を発症するリスクが高まるといわれています。

また加齢以外にも、不規則な生活習慣は、男性ホルモンを低下させることがあります。心身の不調が続く場合は、男性更年期障害が疑われますので、医療機関で適切な検査や治療を受けるようにしましょう。

男性更年期障害の症状

男性更年期障害の症状は主に以下の3種類に分類されます。

  • 身体症状
    多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛・めまい・耳鳴り、頻尿など
  • 精神症状
    不安、無気力、イライラ、集中力や記憶力の低下、うつ症状など
  • 性機能症状
    朝立ちの減少や勃起不全(ED)、性欲減退など

男性更年期障害の症状は人によって異なるため、「この症状があれば男性更年期障害である」と断言することはできません。また上記の症状は、男性更年期障害だけに限った症状ではなく、他の病気が原因で発症している可能性もあるため、まずは病院で男性更年期障害以外の病気の可能性を除外する必要があります。

さまざまな研究から、男性更年期障害はメタボリックシンドローム、心筋便塞、脳梗塞などの生活習慣病につながる可能性が高まることも分かってきました。

上記で挙げたような男性更年期障害の症状に不安がある方は、早めに医療機関を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。

男性更年期障害の診断

女性の更年期障害は、一般的に「閉経」というライフステージの変化に伴い症状があらわれます。しかし男性更年期障害では、このような特別なきっかけがなく発症するため、他の病気との見分けがつきにくいという特徴があります。

男性更年期障害が疑われる場合、まずは血液検査で「テストステロン」という男性ホルモンの値を調べます。テストステロンとは、骨や筋肉などの体の形成や生殖機能の維持、また精神の安定に関わる重要なホルモンです。

このテストステロンが、基準値(11.8pg/mL)を下回る場合は、男性ホルモン低下症候群と診断され、必要に応じて医療機関での治療が検討されます。(参考:LOH症候群診療ガイドライン
総テストステロンと遊離テストステロンを測定することができますが、一般的にアジア人では遊離テストステロンの方が症状との相関が高いとされており、国内のガイドラインでは遊離テストステロンの測定が標準とされています。

また男性更年期障害の診断においては、「AMSスコア」という質問票を用いて、男性更年期障害による症状の度合いを測ることもあります。
AMSスコアとは、精神・心理、身体、性機能についての 17 項目の症状の度合いを5段階で評価し、男性更年期障害の重症度を測るものです。26点以下で症状なし、27-36点で軽度、37-49点で中等度、50点以上で重度のLOHです。

自宅で簡単に男性更年期障害のセルフチェックができるので、気になる症状がある方は、チェックしてみることをおすすめします。

男性更年期障害の治療と費用

男性ホルモン(テストステロン)の数値が著しく低下している場合や、男性更年期障害による症状が重い場合は、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。

男性更年期障害の治療、中でも性機能に関わる治療は主に泌尿器科で行われます。ただし上記で挙げたような身体的状が重い場合は内科、また精神症状が重い場合は精神科・心療内科での治療も可能です。

ここでは、男性更年期障害の治療と費用について解説していきます。

男性更年期障害の治療

加齢により男性ホルモン(テストステロン)の低下がみられる場合、再び自然と数値が上昇してくることはほとんどありません。しかし、男性ホルモン低下の要因となっているストレスや生活習慣の改善により、男性更年期障害の症状改善が期待できます。

また男性ホルモンのテストステロンは、別名「社会性ホルモン」といわれています。家庭や職場などのコミュニティーの中で認められたり、スポーツなどの中で適度な競い合いをしたりすることで、テストステロンの上昇がみられることもあります。

まずは、現在の生活習慣を見直し、以下のことを心がけてみましょう。

  • 適度な運動(筋トレなど)の習慣をつける
  • たんぱく質を中心とした、バランスの良い食事を摂る
  • ストレスをためない
  • 十分な睡眠時間をとる
  • 社会における自分の居場所を見つける  など

生活習慣を改善しても効果がみられない場合や、男性更年期障害の症状が重い場合は薬物療法が用いられることもあります。男性更年期障害の治療における薬物療法では、主に以下の薬が用いられます。

  • 漢方薬(補中益気湯や十全大補湯など)
  • ED治療薬(バイアグラやシアリス、レビトラなど)
  • 抗うつ薬
  • テストステロン補充法(注射薬「エナルモンデポー®」250mgを2-4週間に1回、筋肉内に注射する)
  • 軟膏(男性ホルモンクリーム剤)
  • hCGホルモン製剤  など

この中でも、エナルモンデポーの筋肉注射が治療の中心となりますが、前立腺癌もしくは疑いのある方には禁忌です。
また前立腺肥大症が増悪する可能性、心機能が低下する(心不全になる可能性)、癌の骨転移がある方は高カルシウム血症になる可能性、思春期の青年には性的早熟や骨端の早期閉鎖を引き起こすなど、いくつか注意点がありますので、使用する際には主治医の先生とよく相談して決めてください。

男性更年期障害の治療費は、使用する薬剤やその人の症状によって変動しますが、一般的な目安としては以下の通りです。

男性更年期障害の治療費(3割負担の場合)

初診料:約3,000~5,000円(検査費込)
再診料:約1,000~2,000円

男性更年期障害と診断を受けた場合、治療費は保険適用となりますが、ED(男性勃起不全)治療などの一部は原則自費診療(全額自己負担)となります。

まとめ

更年期障害というと、女性特有のものと思われがちですが、実は男性にも更年期障害の症状があらわれることがあります。男性更年期障害では、男性ホルモン(テストステロン)の低下によって心身の不調がみられることが多いです。男性更年期障害の主な原因は加齢であり、一般的に40~50代以上の男性であれば、誰しも発症する可能性があります。

男性更年期障害の症状に不安を感じる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。