帯状疱疹は早めの治療が肝心!
監修医師:竹内 想(名古屋大学医学部付属病院)
医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積みました。 現在は主に皮膚科医・産業医として勤務しています。
80歳までに3人に1人がかかるといわれている帯状疱疹。帯状疱疹は免疫力が低下している人やストレスが多い人などが発症しやすく、特にコロナ禍において患者が増加したとの声もあがっています。
帯状疱疹は発症すると激しい痛みやかゆみ、水ぶくれがあらわれ、日常生活にも大きな影響を与えます。また帯状疱疹が重症化したり、治療が遅れたりすることで、「帯状疱疹後神経痛」という後遺症につながる恐れがあります。
ここでは医師監修のもと、帯状疱疹の症状や原因、また予防や治療について詳しく解説していきます。
帯状疱疹とは
帯状疱疹とは、痛みやかゆみを伴う赤い発疹があらわれる皮膚疾患の一種です。
子どもの頃などに水ぼうそうにかかったことがある人は、水ぼうそうが治ったあとも体内にウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が潜伏し続けています。そのウイルスが何らかの原因によって、大人になってから再活性化することで帯状疱疹が発症するといわれています。
帯状疱疹は、特に50代以降の発症が多いといわれていますが、子どもや若い方が発症することもある病気です。
ここでは、帯状疱疹の症状や原因について解説していきます。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹の主な症状は以下の通りです。
- 皮膚の痛みやかゆみ・違和感
- 体の左右どちらかにできる赤い帯状の発疹
- 痛みを伴う水疱(水ぶくれ)箇条書き
帯状疱疹では多くの場合、発疹などの皮膚症状があらわれる数日~1週間ほど前に皮膚のかゆみや痛みなどの症状があらわれます。かゆみや痛みの症状は、「なんとなく肌がピリピリ・チクチクする」という程度の人もいれば「皮膚が焼けるように痛い」と感じる人まで、さまざまです。
皮膚症状は主に上半身に現れることが多く、頭や顔、首などにみられることもあります。また帯状疱疹の特徴として、赤い発疹や水ぶくれが体の左右どちらかのみにあらわれることが挙げられます。
帯状疱疹は、治療が遅れると頭痛や発熱、また重篤な後遺症が残ってしまう恐れがあります。もし上記で挙げたような症状があった場合には、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうウイルス)の再活性化によるものと考えられています。
子どもの頃などに水ぼうそうにかかったことがある人は、水ぼうそうが治ったあとも、体内にウイルスが潜伏し続けています。普段はそのウイルスが体に悪影響を及ぼすことはないのですが、以下のようなきっかけからウイルスが再活性化してしまい、帯状疱疹を発症することがあります。
- 加齢
- ストレス
- 過労
- 病気や薬による免疫の低下 など
これらの要因により帯状疱疹を発症させないために、日頃からバランスの良い食生活や十分な睡眠、運動などを心がけ、免疫力を高めるようにしましょう。
帯状疱疹の予防
前述の通り、帯状疱疹は体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスにより発症するため、人から人への感染が原因となるわけではありません。しかし、過去に水ぼうそうにかかったことがない人にウイルスが感染してしまうと、水ぼうそうを発症する恐れがあります。
ウイルスの感染経路は主に、発疹や水ぶくれができている皮膚への接触によるものです。特に免疫力の低い乳幼児や高齢者、また妊婦が水ぼうそうにかかると重症化や合併症の恐れがあるため、ウイルスを感染させないように十分に注意しましょう。
ワクチン接種について
帯状疱疹の予防には、ワクチンの接種が効果的です。現在日本で行われている水痘・帯状疱疹ウイルスのワクチンは以下の2種類があります。
- 生水痘ワクチン「ビケン」
- 帯状疱疹ワクチン「シングリックス」
※50歳以上の方に任意接種が推奨されています
※自治体によっては一部費用の助成があります
2020年に認可された帯状疱疹ワクチン「シングリックス」は、50歳以上で97%、70歳以上で91%の発症予防効果が確認されました。またワクチン接種による予防効果は少なくとも10年間持続するとの報告があります。(参考:GSK、50歳以上の成人を対象とした「シングリックス」の臨床試験で、少なくとも10年間の帯状疱疹に対する予防効果が示されたことを発表)
小児の水痘ワクチンは2014年より定期接種となり、近年水ぼうそうにかかる子どもは減少しました。その一方で大人の帯状疱疹は、コロナ禍において患者が増加したとの報告があがっています。50代以降で、過去に水ぼうそうにかかったことがある方は、ぜひ帯状疱疹ワクチンの接種を検討しましょう。
帯状疱疹の治療と費用について
帯状疱疹は治療が遅れると重症化したり、「帯状疱疹後神経痛」という神経痛を引き起こす恐れが高まります。そのため、できるだけ早く(発疹がでてから3日以内に)治療を開始することが非常に重要です。
帯状疱疹の治療では、症状の緩和と合併症の予防を目的として、主に薬物療法が用いられます。
ここでは帯状疱疹の治療と費用について詳しく解説していきます。
薬物療法
帯状疱疹の治療では、主にウイルスの増殖を抑えることを目的とした「抗ウイルス薬」が使用されます。
抗ウイルス薬は、帯状疱疹の発疹が出てから3日以内に服用を開始することが推奨されています。3日以内に服用を開始すれば、多くの場合1週間程度で症状の改善がみられます。抗ウイルス薬は7日間飲み続ける必要があるため、もし服用途中で症状の改善がみられたとしても、きちんと処方された薬を飲み切ることが重要です。
帯状疱疹後神経痛
抗ウイルス薬の服用が遅れてしまった場合や、痛みや皮膚症状が重い場合には、「帯状疱疹後神経痛」につながることがあります。
帯状疱疹後神経痛とは、皮膚の発疹がおさまったあとも辛い神経の痛みが残ってしまう後遺症のことです。50代以降に帯状疱疹を発症した方の約2割に帯状疱疹後神経痛がみられるという報告もあります。
帯状疱疹後神経痛痛みの程度は人によって異なりますが、ひどい場合は肌に衣服が触れるだけでも強い痛みが生じることもあります。またこの痛みは、数か月程度続くケースも少なくありません。
帯状疱疹後神経痛が発症してしまった場合、治療は鎮痛剤や抗うつ薬などが用いられます。またペインクリニックなどで神経ブロック治療や心理療法を取り入れることで、痛み症状の改善がみられることもあります。
帯状疱疹の治療費
帯状疱疹の治療費の目安は以下の通りです。
帯状疱疹の治療費(3割負担の場合)
初診:約3,000~5,000円(薬代含む)
再診:約1,000~2,000円
前述の通り、帯状疱疹は早期治療により多くの場合は1週間程度で症状がおさまりますが、合併症や後遺症がある場合には、数か月程度の治療が必要となるケースもあります。
辛い痛みが長引くだけでなく、高額な治療費がかかってしまうことも考えられますので、帯状疱疹が疑われる皮膚症状があらわれた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
まとめ
帯状疱疹とは、子どもの頃などにかかった水ぼうそうのウイルスが再活性化して起こる皮膚疾患です。
症状があらわれた後、早期に適切な治療を行えば多くの場合1週間程度で症状は改善されます。しかし治療が遅れた場合や重症化した場合には、帯状疱疹後神経痛という後遺症につながる恐れがあります。
帯状疱疹の発症予防・重症化予防にはワクチン接種が効果的です。また発疹などの皮膚症状があらわれた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。