メディコレNEWS|【医師監修】発達障害を疑うきっかけと相談先

2023.09.12

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執筆医師:武井 智昭(医療法人社団 柴健会 小谷クリニック)
慶應義塾大学医学部卒。日本プライマリケア学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本小児科学会専門医

自分のお子さんが、同年代のお子さんと遊べない、コミュニケーションがとれないなどと悩んだり、こだわりが強い、癇癪などの感情の起伏が強いなどの理由から育てにくさや、こどもとしての違和感を感じることがあります。

このような時、最近では「発達障害」という言葉もよく知られるようになってきて、自分の子どもが発達障害なのではないかと悩んだり、相談をされる親御さんも増えてきました。

そこで今回は武井 智昭先生に「子どもの発達障害」について教えていただきます。

発達障害とは

発達障害とは、生まれながらの脳の機能・発達の偏りによる生活での障害です。

現時点ではその明確な原因は突き止められていないため、医学的に血液検査や頭部MRIなどの画像検査ではこの症状を説明できる異常をみとめません。得意・不得意の特性に関して凸凹が多いため、お子さんが過ごす幼稚園・保育園、小学校、習い事などの環境での不適応、周囲の人とのコミュニケーションや行動のミスマッチにより、日常生活や社会生活で困難が生じます。

この発達障害は、体表奇形とは異なり外見からわからないため、「親の育て方が悪い」「自分勝手な性格」「空気が読めない」などと誤解が生じることも多く、ご家族を悩ませることも多いかと思います。

発達障害の発見が遅れるとどうなる?

発達障害の特性が周囲に理解ない状態が続くと、本人の自己肯定感や生きづらさが強くなり、身体症状として頭痛・腹痛・チックなどの不随意運動、また精神症状としてうつ、過緊張、不登校、自傷行為、ひきこもり、不眠などの二次障害と呼ばれる症状があらわれます。
特に発達障害の発見が遅れるほどこうした二次障害で診断が下される傾向があります

このため、発達障害も他疾患と同様に早期での対応が重要となります。ここでは代表的な発達障害である「自閉スペクトラム症」と「注意欠如・多動症(ADHD)」について詳しく解説していきます。

自閉スペクトラム症の特徴

自閉スペクトラム症の主な特性は以下の通りです。

  • こだわり・興味が限局して同じことを繰り返す
  • 偏食(味覚過敏)や聴覚過敏・視覚過敏などの知覚過敏の症状
  • 言語発達遅延
  • コミュニケーションの違和感  など

自閉スペクトラム症は言葉の発達が遅れることが多くコミュニケーションがとりにくいこと、またクレーン現象(大人の手をとって、物をとるなどの欲求を叶えようとする行動)などから、1歳6か月児健診や3歳児健診で疑われ診断がつく場合があります。
この一方で言葉の発達が明らかではない自閉スペクトラム症の児では、小学校からの教育の場、あるいは中学生・高校生などで診断される場合もあります。

自閉スペクトラム症を疑うきかっけとしては、同世代のお子さんと一緒に遊べずコミュニケーションがとれない、友達の輪に入れないということから、発表会や祭り・運動会などの集団の場にふさわしい対応がとれない(一人だけ泣いている、タイミングがずれているなど他のお子さんと比べて違和感があるなど)などがあります。

注意欠如・多動症(ADHD)の特徴

注意欠如・多動症(ADHA)の主な特性は以下の通りです。

  • 多動
  • 不注意
  • 衝動性  など

上記のような行動の度合いは、お子さんによって異なります。
注意欠如・多動症を疑うきっかけとしては、年齢や周囲の状況、発達の状況を踏まえて、あまりにも落ち着きがない、事故を起こすレベルで衝動的に動く、じっとしていること、集中することが苦手で長続きがしないなどがあります。

3~4歳までは運動機能の発達が堅調であるため、多動性であることの判断は容易ではありません
しかしこうした多動性・衝動性が同年代のお子さんと比べて強く、保育園・幼稚園、学校などの現場や家庭などの複数の場でみられること、またそれにより教師や周囲の友人、ご両親や親族が対応に困っているときに注意欠如・多動症が疑われます。

発達障害はどこで相談できる?

発達障害の特性による生きにくさ・困難さは、家庭や保育園・幼稚園・学校との連携により環境調整、特性に合った遊び・学びなどテーラーメードの対応で軽減される傾向にあります。その子の特性に合わせたサポートが受けられる環境整備が大切です。

前述の自閉スペクトラム症や注意欠陥・多動症状等の発達障害については、まずはかかりつけの小児科に相談したうえで、発達検査が可能である児童精神科を受診することも1つの方法です。基幹病院の医療機関によっては、発達障害の専門外来を設置していることもあります。

最近では発達障害の診療ニーズが高いため、初診の予約はかなり困難であり取れても2~3か月後になってしまうことも多いです。医療機関への相談とあわせて、地域の療育センター、保健センター、発達障害者支援センターなどでも相談することができます。

発達障害で受診する際のポイント

初回の診察にあたっては、現在のお子さまの通園・通学の様子において、本人や両親が困っていることを箇条書きにしておくとよいでしょう。

加えて、出産のときから乳幼児健康診断の様子や指摘事項などについても聞かれます。発達を重点に診療をしますから、つかまり立ちや歩き始めた時期などの運動発達、1語文やコミュニケーションなどの言語発達に関しては重要な情報となります。母子健康手帳や園・学校での様子の記録なども準備しておくとよいでしょう。

受診前に、「〇〇歳の時にどのよう出来事があった・・・」など、印象に残ったことを作成して、その文書を渡して具体的なエピソードを交えてお話すると、診断や検査などがスムーズに行えます。1回の面談は30分などと限られた時間の中での対応であり、数回のやり取り・検査によって最終的な診断となりますので、初診から診断・今後の方針などがある程度方向性が定まるまで、さらに数か月要することが多いです。

まとめ

発達障害に気が付くきっかけとしては親御さんが「同じ年代の他のお子さんと比べたりして、自分の子供は〇〇ができないので不安、心配」と感じるケースが多いです。

インターネットや育児書などには発達の目安が記載されておりますが、これはあくまでも平均的な目安であり、「〇〇歳でこれができていなければいけない」というノルマではありません。なにより、早期に自分の子供の特性を理解したうえで、テーラーメードな育て方をして環境整備をしてあげることが、お子さんを長いスパンで育てる上で大事な要素となります。