【医師監修】肺がんの初期症状とは?咳や痰が続く場合は要注意?

2023.10.26

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監修医師:甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室)
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科を卒業後、心臓血管外科として勤務。国家公務員共済組合連合会 大手前病院 救急科医長を務め、現在はTOTO関西支社健康管理室に産業医として勤務。

肺がんは早期発見できれば、手術でがんの病巣を切除することにより、根治を目指せるがんです。

その一方で、初期症状が現れにくく、早い段階で見つけるのが難しいため、日本人のがん死亡者数で男女1位のがんでもあります。

肺がんは組織型によっても進行速度が異なり、進行の速いタイプの肺がんでは、咳や痰などの症状が気になり始めた頃には、すでにがんが進行していて治療が遅れることが多いためです。

咳や痰などの症状がある人の中には、肺がんについて少し気になっている人もいるかもしれません。

この記事では、肺がんの症状や肺がんのリスク要因について解説していきます。

肺がんの初期症状とは

肺がんは、初期症状が現れにくいがんであり、肺がんの自覚症状に気づいたときには、すでにがんが進行していることもあります。

肺がんの具体的な症状には、以下のものがあります。

  • 痰・欠痰
  • 息苦しさ
  • 胸の痛み
  • 発熱
  • だるさ

肺がんの自覚症状として最も現れやすいのが咳や痰です。

がん細胞により、肺や気管支が刺激されると、咳や痰が持続的に出るようになります。

咳や痰は風邪でもみられる症状であるため、そのまま放置されてしまうことも少なくありません。2週間以上咳や痰が続いている場合は、ただの風邪ではなく、肺がんなどその他の呼吸器疾患を疑う必要があります。

肺がんが進行して、気管支に傷がつくと出血が起こるので、血痰が出るようになります。咳とともに血が出ると、「胃が荒れているのかも」と考える方もいますが、血の色が鮮血である場合、気管や肺からの出血である可能性が高いです

がん細胞が大きくなり、気管支が閉塞気味になると息がゼイゼイしたり、息苦しさを感じたりするようになります。

また、肺は肋骨と肋間神経に囲まれているので、肺にあるがん細胞が大きくなることで、胸の痛みや背中の痛みが現れることもあります。また、肺がんに限らずがんになると、「悪液質」という状態になり、食欲が減退して体重減少が起こりやすくなります。

さらに、人によっては呼吸器の症状が現れる前に、肺がんが進行して他の器官への転移により症状がみられることがあります。がん細胞は無秩序に増殖していくので、肺の近くの臓器を圧迫したり、血液やリンパの流れに乗って、遠隔の臓器に転移したりします。

肺がんの転移がんにみられる症状には以下のものがあります。

  • 頭痛
  • ふらつき
  • 麻痺
  • 声のかすれ
  • 顔のむくみ

上記は、呼吸器の症状とあまり関連がないので、自分では肺がんを疑うのが難しいものです。

頭痛・ふらつき・麻痺は、肺がんが脳に転移したときに診られる症状です。脳卒中などでもみられる症状であるため、検査で原因を鑑別する必要があります。

また、声帯の動きを司る「反回神経」の一部は、気管支に沿って走っているため、がんの進行により声のかすれが起こることがあります。

肺がんが大きくなったり、近くのリンパ節に転移したりすると、心臓に戻る血液が流れる「上大静脈」が圧迫されるため、顔がむくみやすくなります。

繰り返しになりますが、上記は自覚症状ではありますが、症状に初めて気づいたときは、肺がんが進行していることもあります。
肺がんかどうかを知るには、検査を受ける必要があり、症状だけで判断することはできません。体の異変や何らかの症状が続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

肺がんのリスク要因とは?

肺がんの最も重要なリスク要因がタバコです。

タバコには5300種類もの化学物質が含まれており、このうち70種類は発がん性物質といわれています。タバコにより有害物質を吸い込み続けることにより、気管支や肺の細胞のダメージが重なり、年月を経てがん化します。

実際に、喫煙者の肺がんになる確率は非喫煙者のおよそ4倍ですが、禁煙をすれば肺がんのリスクを下げるのに役立ちます。

タバコを吸うと脳からドーパミンが放出されるので快感を得るので、身体的依存や精神的依存を生じるため、一度喫煙を始めるとなかなかやめられないことが多いです。

肺がん予防のためには、とにかく喫煙を始めない方がよいでしょう。すでにタバコを吸っている人は、やる気だけで禁煙を達成するのは難しいので、医療機関の専門外来にて治療薬を用いながら禁煙に取り組むのがおすすめです。

また、自分がタバコを吸っていなくても、他人のタバコの煙(副流煙)を吸うのもよくありません。副流煙はタバコのフィルターを通していないことと、低温で燃えているため不完全燃焼になりやすく、主流煙よりも数倍の有害物質を含んでいます。肺がんになるリスクを下げるためにも、タバコや受動喫煙を避けるようにしましょう。

また、タバコの煙以外にも、アスベストや結核などの肺の病気により、肺がんのリスクが上がります。

肺がんの不安がある方へ

肺がんは初期症状が現れにくいので、定期的な検査を受けるのがおすすめです。

がんは進行状態によって、早期がんと進行がんに分けられます。がん細胞は周りの組織や器官を破壊しながら増殖していく特徴がありますが、早期がんの状態で発見できれば、治療の選択肢も増えるので、生存率や予後を向上させることができます。

肺がんのスクリーニング検査には、胸部X線検査と喀痰細胞診があり、体に大きな負担をかけずに受けられます。

胸部X線検査はレントゲン検査のことで、上半身の内部をモノクロ画像で映し出す画像検査です。X線は身体の部位によって透過性が異なる性質がり、健康な肺は黒く映し出されるのに対して、骨や心臓は白色に映し出されます。

一方、気管支や肺にがん細胞があると、白い影として映し出されます。

ただ、肺は肋骨や心臓が重なる器官であるため、小さい腫瘍は見逃してしまう可能性もあります。

喀痰細胞診は、痰に含まれている細胞を顕微鏡で調べる検査です。痰には気管支や肺の細胞が含まれています。検査で採取した痰を染色すると、細胞の層ごとにオレンジ色や緑色に染め出されるため、観察しやすくなります。がん細胞は形がいびつだったり、不規則な増殖がみられたりします。

喀痰細胞診は肺の入り口部分(肺門)に発生したがんの発見に役立つ検査です。肺門はレントゲンで、肺以外の器官重なりやすいので、2つの検査を併用することで、肺がんの発見率を高めます。
肺門から発生する肺がんは喫煙者に多いため、50歳以上で一定の喫煙指数(喫煙年数×1日の喫煙本数)に対して行われます。なお上記の2つの検査で何らかの異常がみられた場合は、CTなどその他の精密検査を行います。

まとめ

肺がんは初期症状が現れにくく、症状に異変を感じたときには、進行がんになっていることがあります。肺がんは早い段階で発見できれば、手術で根治を目指せるので、早期発見することが大切です。

肺がんのスクリーニング検査には胸部X線検査と喀痰細胞診があり、健康診断や肺がん検診で受けられます。肺がん予防を意識した生活を送るとともに、定期的に検査を受けるようにしましょう。

咳や痰など症状が長引く場合はそのままにするのではなく、医療機関へ受診することも大切です。