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この記事はメディコレ監修医師による監修済みです。
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帯状疱疹による皮疹などの症状が治ったあとに、神経痛の後遺症が残ることがあります。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。
帯状疱疹後神経痛の痛みは非常に厄介で、通常の痛み止めが効きづらく、適切な治療を行わないと痛みが残り続けてしまいます。
そこで今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「帯状疱疹後神経痛の対処法」について教えていただきます。
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帯状疱疹による皮疹などの症状が治ったあとに、神経痛の後遺症が残ることがあります。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。
帯状疱疹後神経痛の痛みは非常に厄介で、通常の痛み止めが効きづらく、適切な治療を行わないと痛みが残り続けてしまいます。
そこで今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「帯状疱疹後神経痛の対処法」について教えていただきます。
帯状疱疹とは
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帯状疱疹後神経痛という、非常にやっかいな痛みの病気があります。
では、そもそも帯状疱疹とはどのような病気なのでしょうか。
水痘帯状疱疹ウイルスの特徴
帯状疱疹を起こすのは、ヘルペスウイルスの一種である水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)です。このウイルスは空気感染を起こすウイルスの代表的なもので、小児期に水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こします。
水疱瘡は2歳から8歳頃、ワクチン接種をしていない場合に感染します。特徴的な皮疹と発熱によって発症します。
感染初期は体の免疫反応も十分に対応できず、ウイルスは増殖し、積極的に体の外に出て行きますから、他の人に感染が広がってしまいます。しかしだんだんと体内で免疫が形成され、ウイルスを排除し始めます。
だいたい1週間ぐらいで皮疹はかさぶたになり、感染力を失います。一度感染したり、ワクチンを打ったりすると体の中には抗体が形成され、再度ウイルスが体内に入ってきてもすぐに免疫反応が起こり、感染が成立することはありません。しかし大人で感染すると発熱が長期化したり、発熱の程度も非常に強いものになったりと、重篤になる可能性があるので、小児期に感染しなかったりワクチンを打たなかった方などは警戒が必要となります。
神経細胞に潜み続けるVZV
感染した後1週間程度で感染力は無くなり、症状も引いていきます。しかし、体内に入り込んだVZVはいなくなりません。
体内にある免疫によってウイルスは感染力を失い、増殖もできなくなりますが、体の中の免疫が反応しにくい場所に潜んでいます。
VZVが潜む場所として、代表的なのが神経細胞です。
神経細胞は他の細胞と違って細胞分裂をしたり、作り変えられたりする事がない細胞ですから、免疫細胞が反応しにくいのです。そのため、神経細胞の中に潜んだウイルスは一生そのなかに潜み続けることができます。一度水疱瘡に感染した人は、一生ウイルスとともに生きていくことになるのです。
帯状疱疹の発症
VZVが細胞の中に潜んでいても、免疫細胞は細胞の周りに常にいますから、増殖したり外に出て行ったりすることはありません。
しかし、何らかの原因で免疫力が低下すると、突然VZVは活性化し、増殖を始めるのです。
免疫力が低下する原因としては以下のようなことが挙げられます。
悪性腫瘍
悪性腫瘍に伴う化学療法
免疫力を低下させるステロイドなどの薬剤を使用
疲労やストレス など
これらの原因によってVZVが活性化し、発症するのが「帯状疱疹」です。
神経細胞とは?
神経細胞は、脊髄や脳幹に細胞の本体があります。そこから、細胞の一部分が細長く伸びて、神経線維を形成します。
神経線維はそれぞれ目的の場所まで伸びていきます。神経線維一本一本は非常に細いですが、同じ方向に伸びる神経線維はひとまとまりになって伸びていきます。
VZVは、もともと神経細胞の中に存在しました。しかし免疫力が低下して増殖を開始すると、神経細胞の中で大量に増殖し、神経線維にそってどんどんと広がっていきます。
神経線維の中はウイルスでいっぱいになりますから、線維の中の圧力が上昇します。すると、神経線維が損傷し、いたみを感じるのです。
神経線維に沿って広がったウイルスは、神経線維から外に出て、皮下に移動し、皮下でも増殖を始めます。皮下で増殖したウイルスは水疱を形成し、体表上で皮疹として確認できるようになります。これが帯状疱疹です。
帯状疱疹は全身のどこでも起こりえます。脊髄の神経細胞内からVZVが増殖した場合には脊髄神経に沿って、体幹部に地面と平行方向に皮疹が広がります。また、顔面は三叉神経という脳神経が感覚を感知していますから、その神経に沿って顔面にも帯状に水疱ができることもあります。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹を発症している時点で免疫力が低下していますから、帯状疱疹と診断されたら、すぐに治療を開始しないと更にウイルスは増殖してしまいます。
ウイルスが更に増殖するとどんどんと神経障害が引き起こされてしまい、後述する「帯状疱疹後神経痛」を発症したり、神経痛の症状が強くなったりします。
治療としては第一に抗ウイルス薬の投与を行います。前述のように、早期に治療を開始する必要がありますので、疑ったらすぐに救急外来でもいいですので病院を受診しましょう。
また、病院としても100%帯状疱疹らしくなくてもすぐに治療を開始していく事もあります。
痛みがある場合は痛み止めやビタミン剤を投与します。
それに加えて、リスクが高い場合は神経痛に移行しないようにステロイドの投与が行われます。
ステロイドの効果は投与によって完全に神経痛への以降が抑えられると言う事はありませんが、ある程度神経痛を抑えることができると言われています。
帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹が治癒した後は、皮疹は枯れますが完全には消失せず、跡が残ります。
しかし、帯状疱疹治癒後の症状は皮疹だけではありません。非常にやっかいな後遺症として、神経痛が残ってしまいます。
そもそも神経が障害されると、それ自体で非常に強い痛みを感じます。しかし、神経は障害を受けたときだけではなく、障害を受けた後修復を行う際にもいたみを感じます。
さらに、修復が不完全になされてしまったり、あやまった神経同士がつながってしまうなど異常な修復がなされてしまったりした場合には、痛みがずっと続く事になります。
帯状疱疹の場合にも神経が障害されてしまい、「神経障害性疼痛」が起こります。そして、一度障害されてしまった神経は、見た目上帯状疱疹が治癒した後にも障害が残ってしまい、痛みが長期間にわたって続いてしまいます。とくに50歳以上で帯状疱疹を起こした場合には帯状疱疹後神経痛になりやすいと言われているため、注意が必要です。
帯状疱疹の神経痛に痛み止めは効く?
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帯状疱疹は治ったとおもっても、その後に神経痛がやってくるため、帯状疱疹後神経痛は身体的にも心理的にも非常につらいものです。
痛みがあるため痛み止めで対応したいところなのですが、帯状疱疹後神経痛には痛み止めはあまり効果がありません。
そもそも神経障害性疼痛に対しては痛み止めの効果は限定的なのです。なぜなのでしょうか。
痛み止めの3つの種類
痛み止めは、大きく分けて3種類に分かれます。
一種類目が「NSAIDs(エヌセイズ)」と呼ばれる痛み止めです。
これは炎症を抑えることで痛みを抑えます。筋肉痛や怪我をした場所などは、壊れた組織を修復しようと炎症が起こります。炎症が起こると、その場所は腫れて熱感を持ってきます。すると、痛みを感じるセンサーが過敏に反応するようになってしまうので、触ったり動かしたりしただけでも痛みを感じるようになります。
NSAIDsは炎症を抑えることで痛みを感じるセンサーを鈍感にして痛みを抑えるのです。
二種類目が「アセトアミノフェン」という痛み止めです。
アセトアミノフェンは軽い炎症を抑える効果に加えて、頭や脊髄など、様々な場所で痛みの伝達を抑えたり、痛みを感じる脳の反応を鈍感にしたりします。1つ1つの効果は弱いのですが、複合することでじんわりと痛みを抑えてくれます。
三種類目が「医療用麻薬」です。
もちろん市販薬では使用されていないのですが、病院で処方される薬として使われます。麻薬も脳の痛みを感じる部分に作用して痛みを感じにくくしてくれます。
神経障害性疼痛には痛み止めが効かない?
では、神経障害性疼痛はどうでしょうか。神経障害性疼痛は、先ほど説明したように神経が修復される時に起こってくる痛みでした。そのため、炎症や痛みのセンサーが関わっている訳ではありませんのでNSAIDsは効果がありません。
また、痛みとしてはじんわりと痛いのではなく、ビリッとした鋭い痛みが動かすたびに出てきますから、痛みを全般に抑えるようなアセトアミノフェンや麻薬も効果が薄いのです。理論上、麻薬を大量に使用して痛みをほとんど感じないようにしてしまえば神経障害性疼痛も感じなくする事はできるのですが、それほどの麻薬を使用してしまうと一般的な痛みをほとんど感じなくなり、更に副作用も非常に多くなってしまうので現実的ではありません。
そのため、神経障害性疼痛である帯状疱疹後神経痛は痛み止めがなかなか効かず、非常にやっかいなものなのです。皮膚科の先生では十分に対応できず、ペインクリニックに紹介されてくる患者さんも多くいます。
ペインクリニックでの治療について
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ではペインクリニックではどのように対応するのでしょうか。ペインクリニックでは、帯状疱疹後神経痛に対しては神経障害性疼痛に準じた治療をしていきます。
内服薬としては、抗てんかん薬や抗うつ薬を使用します。これらの薬剤は、神経の興奮を抑えることで種々の発作を抑える薬ですが、神経障害性疼痛の際の痛みの伝達も和らげてくれるので、帯状疱疹後神経痛の際にもよく使用されます。
また、神経障害性疼痛に特異的な治療薬として、「プレガバリン」という薬剤があります。商品名をリリカと言いますが、この薬は神経が次の神経へと伝達する部分をブロックする事で、痛みの伝達をブロックしてくれます。こちらも帯状疱疹後神経痛にたいしてよく使用されます。
神経自体の修復を助けるために、ビタミン剤の処方もよく行われます。特にビタミンB12は神経が修復される時に使用されるビタミンですから、不足すると十分に修復されず痛みが持続してしまいます。そのため、内服で補充する事で神経の修復を助けてあげるのです。
他の治療としては、「神経ブロック治療」を行います。神経ブロックとは、神経の根本付近に局所麻酔をする事で痛みを抑える治療です。神経障害性疼痛が起こっている神経の根元に局所麻酔をすることで、痛みを抑えます。
もちろん局所麻酔ですから麻酔薬の効果が切れるとすぐに痛みが再発してきます。しかし、神経ブロックを繰り返すことで痛みがない状態を脳が思い出し、痛みの感じ方がマシになってきます。
ペインクリニックではこれらの治療を複合することで痛みを可能な限り弱くするお手伝いをしているのです。
帯状疱疹の神経痛はいつまで続く?
帯状疱疹後神経痛が起こってしまうと、治療をしないとなかなか治っていきません。
というのは、神経自体が長い距離にわたってズタズタにされていますから、修復も非常に長期間、広範囲に及んでしまうのです。もちろんすぐに治る方もいらっしゃいますが、特に皮疹が広範囲にわたってしまった方を中心に、永続的に痛みが続く方もいらっしゃるのです。
また、ひとは痛みを感じると体に危険な事が起こっていると判断して、更に痛みが加わるとより強く感じる、すなわち痛みによって痛みに敏感になってしまうという特徴があります。
そのため、帯状疱疹後神経痛のように痛みが長期間に及ぶような痛みの場合、だんだんと神経の修復が進んでいって本来であれば痛みを感じない程度にまで改善したとしても、痛みに対して敏感な状態が持続してしまうことで、痛みの感覚が残ってしまうという事もあるのです。
このような事を防ぐため、早期に神経が修復されるようにビタミンB12の投与をする事が重要となりますし、早期から痛みをコントロールすることも重要になるのです。
また、痛みが長く続いた場合には痛みの記憶が形成されますから、神経ブロックが有用になってきます。
個人個人によって状況は異なりますから、ペインクリニックではその人に応じた治療法を選択します。帯状疱疹の後に痛みがある場合には、主治医と相談して早めにペインクリニックに紹介してもらうといいでしょう。
メディコレNEWS編集部まとめ
今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「帯状疱疹後神経痛の対処法」について教えていただきました。
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は一度感染すると、ウイルスは生涯体の中に潜伏し続け、免疫力が低下した時などに、帯状疱疹を発症します。そして帯状疱疹は治癒後に「帯状疱疹後神経痛」という後遺症が残ることがあります。
この帯状疱疹後神経痛の痛みは、通常の痛み止めではなかなか効かず、治療を行わないとなかなか治っていかないという非常に厄介なものです。
こういった痛みに対してはペインクリニックで治療が可能です。気になる症状がある人は早めにペインクリニックを受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
帯状疱疹とは
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帯状疱疹後神経痛という、非常にやっかいな痛みの病気があります。
では、そもそも帯状疱疹とはどのような病気なのでしょうか。
水痘帯状疱疹ウイルスの特徴
帯状疱疹を起こすのは、ヘルペスウイルスの一種である水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)です。このウイルスは空気感染を起こすウイルスの代表的なもので、小児期に水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こします。
水疱瘡は2歳から8歳頃、ワクチン接種をしていない場合に感染します。特徴的な皮疹と発熱によって発症します。
感染初期は体の免疫反応も十分に対応できず、ウイルスは増殖し、積極的に体の外に出て行きますから、他の人に感染が広がってしまいます。しかしだんだんと体内で免疫が形成され、ウイルスを排除し始めます。
だいたい1週間ぐらいで皮疹はかさぶたになり、感染力を失います。一度感染したり、ワクチンを打ったりすると体の中には抗体が形成され、再度ウイルスが体内に入ってきてもすぐに免疫反応が起こり、感染が成立することはありません。しかし大人で感染すると発熱が長期化したり、発熱の程度も非常に強いものになったりと、重篤になる可能性があるので、小児期に感染しなかったりワクチンを打たなかった方などは警戒が必要となります。
神経細胞に潜み続けるVZV
感染した後1週間程度で感染力は無くなり、症状も引いていきます。しかし、体内に入り込んだVZVはいなくなりません。
体内にある免疫によってウイルスは感染力を失い、増殖もできなくなりますが、体の中の免疫が反応しにくい場所に潜んでいます。
VZVが潜む場所として、代表的なのが神経細胞です。
神経細胞は他の細胞と違って細胞分裂をしたり、作り変えられたりする事がない細胞ですから、免疫細胞が反応しにくいのです。そのため、神経細胞の中に潜んだウイルスは一生そのなかに潜み続けることができます。一度水疱瘡に感染した人は、一生ウイルスとともに生きていくことになるのです。
帯状疱疹の発症
VZVが細胞の中に潜んでいても、免疫細胞は細胞の周りに常にいますから、増殖したり外に出て行ったりすることはありません。
しかし、何らかの原因で免疫力が低下すると、突然VZVは活性化し、増殖を始めるのです。
免疫力が低下する原因としては以下のようなことが挙げられます。
悪性腫瘍
悪性腫瘍に伴う化学療法
免疫力を低下させるステロイドなどの薬剤を使用
疲労やストレス など
これらの原因によってVZVが活性化し、発症するのが「帯状疱疹」です。
神経細胞とは?
神経細胞は、脊髄や脳幹に細胞の本体があります。そこから、細胞の一部分が細長く伸びて、神経線維を形成します。
神経線維はそれぞれ目的の場所まで伸びていきます。神経線維一本一本は非常に細いですが、同じ方向に伸びる神経線維はひとまとまりになって伸びていきます。
VZVは、もともと神経細胞の中に存在しました。しかし免疫力が低下して増殖を開始すると、神経細胞の中で大量に増殖し、神経線維にそってどんどんと広がっていきます。
神経線維の中はウイルスでいっぱいになりますから、線維の中の圧力が上昇します。すると、神経線維が損傷し、いたみを感じるのです。
神経線維に沿って広がったウイルスは、神経線維から外に出て、皮下に移動し、皮下でも増殖を始めます。皮下で増殖したウイルスは水疱を形成し、体表上で皮疹として確認できるようになります。これが帯状疱疹です。
帯状疱疹は全身のどこでも起こりえます。脊髄の神経細胞内からVZVが増殖した場合には脊髄神経に沿って、体幹部に地面と平行方向に皮疹が広がります。また、顔面は三叉神経という脳神経が感覚を感知していますから、その神経に沿って顔面にも帯状に水疱ができることもあります。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹を発症している時点で免疫力が低下していますから、帯状疱疹と診断されたら、すぐに治療を開始しないと更にウイルスは増殖してしまいます。
ウイルスが更に増殖するとどんどんと神経障害が引き起こされてしまい、後述する「帯状疱疹後神経痛」を発症したり、神経痛の症状が強くなったりします。
治療としては第一に抗ウイルス薬の投与を行います。前述のように、早期に治療を開始する必要がありますので、疑ったらすぐに救急外来でもいいですので病院を受診しましょう。
また、病院としても100%帯状疱疹らしくなくてもすぐに治療を開始していく事もあります。
痛みがある場合は痛み止めやビタミン剤を投与します。
それに加えて、リスクが高い場合は神経痛に移行しないようにステロイドの投与が行われます。
ステロイドの効果は投与によって完全に神経痛への以降が抑えられると言う事はありませんが、ある程度神経痛を抑えることができると言われています。
帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹が治癒した後は、皮疹は枯れますが完全には消失せず、跡が残ります。
しかし、帯状疱疹治癒後の症状は皮疹だけではありません。非常にやっかいな後遺症として、神経痛が残ってしまいます。
そもそも神経が障害されると、それ自体で非常に強い痛みを感じます。しかし、神経は障害を受けたときだけではなく、障害を受けた後修復を行う際にもいたみを感じます。
さらに、修復が不完全になされてしまったり、あやまった神経同士がつながってしまうなど異常な修復がなされてしまったりした場合には、痛みがずっと続く事になります。
帯状疱疹の場合にも神経が障害されてしまい、「神経障害性疼痛」が起こります。そして、一度障害されてしまった神経は、見た目上帯状疱疹が治癒した後にも障害が残ってしまい、痛みが長期間にわたって続いてしまいます。とくに50歳以上で帯状疱疹を起こした場合には帯状疱疹後神経痛になりやすいと言われているため、注意が必要です。
帯状疱疹の神経痛に痛み止めは効く?
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帯状疱疹は治ったとおもっても、その後に神経痛がやってくるため、帯状疱疹後神経痛は身体的にも心理的にも非常につらいものです。
痛みがあるため痛み止めで対応したいところなのですが、帯状疱疹後神経痛には痛み止めはあまり効果がありません。
そもそも神経障害性疼痛に対しては痛み止めの効果は限定的なのです。なぜなのでしょうか。
痛み止めの3つの種類
痛み止めは、大きく分けて3種類に分かれます。
一種類目が「NSAIDs(エヌセイズ)」と呼ばれる痛み止めです。
これは炎症を抑えることで痛みを抑えます。筋肉痛や怪我をした場所などは、壊れた組織を修復しようと炎症が起こります。炎症が起こると、その場所は腫れて熱感を持ってきます。すると、痛みを感じるセンサーが過敏に反応するようになってしまうので、触ったり動かしたりしただけでも痛みを感じるようになります。
NSAIDsは炎症を抑えることで痛みを感じるセンサーを鈍感にして痛みを抑えるのです。
二種類目が「アセトアミノフェン」という痛み止めです。
アセトアミノフェンは軽い炎症を抑える効果に加えて、頭や脊髄など、様々な場所で痛みの伝達を抑えたり、痛みを感じる脳の反応を鈍感にしたりします。1つ1つの効果は弱いのですが、複合することでじんわりと痛みを抑えてくれます。
三種類目が「医療用麻薬」です。
もちろん市販薬では使用されていないのですが、病院で処方される薬として使われます。麻薬も脳の痛みを感じる部分に作用して痛みを感じにくくしてくれます。
神経障害性疼痛には痛み止めが効かない?
では、神経障害性疼痛はどうでしょうか。神経障害性疼痛は、先ほど説明したように神経が修復される時に起こってくる痛みでした。そのため、炎症や痛みのセンサーが関わっている訳ではありませんのでNSAIDsは効果がありません。
また、痛みとしてはじんわりと痛いのではなく、ビリッとした鋭い痛みが動かすたびに出てきますから、痛みを全般に抑えるようなアセトアミノフェンや麻薬も効果が薄いのです。理論上、麻薬を大量に使用して痛みをほとんど感じないようにしてしまえば神経障害性疼痛も感じなくする事はできるのですが、それほどの麻薬を使用してしまうと一般的な痛みをほとんど感じなくなり、更に副作用も非常に多くなってしまうので現実的ではありません。
そのため、神経障害性疼痛である帯状疱疹後神経痛は痛み止めがなかなか効かず、非常にやっかいなものなのです。皮膚科の先生では十分に対応できず、ペインクリニックに紹介されてくる患者さんも多くいます。
ペインクリニックでの治療について
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ではペインクリニックではどのように対応するのでしょうか。ペインクリニックでは、帯状疱疹後神経痛に対しては神経障害性疼痛に準じた治療をしていきます。
内服薬としては、抗てんかん薬や抗うつ薬を使用します。これらの薬剤は、神経の興奮を抑えることで種々の発作を抑える薬ですが、神経障害性疼痛の際の痛みの伝達も和らげてくれるので、帯状疱疹後神経痛の際にもよく使用されます。
また、神経障害性疼痛に特異的な治療薬として、「プレガバリン」という薬剤があります。商品名をリリカと言いますが、この薬は神経が次の神経へと伝達する部分をブロックする事で、痛みの伝達をブロックしてくれます。こちらも帯状疱疹後神経痛にたいしてよく使用されます。
神経自体の修復を助けるために、ビタミン剤の処方もよく行われます。特にビタミンB12は神経が修復される時に使用されるビタミンですから、不足すると十分に修復されず痛みが持続してしまいます。そのため、内服で補充する事で神経の修復を助けてあげるのです。
他の治療としては、「神経ブロック治療」を行います。神経ブロックとは、神経の根本付近に局所麻酔をする事で痛みを抑える治療です。神経障害性疼痛が起こっている神経の根元に局所麻酔をすることで、痛みを抑えます。
もちろん局所麻酔ですから麻酔薬の効果が切れるとすぐに痛みが再発してきます。しかし、神経ブロックを繰り返すことで痛みがない状態を脳が思い出し、痛みの感じ方がマシになってきます。
ペインクリニックではこれらの治療を複合することで痛みを可能な限り弱くするお手伝いをしているのです。
帯状疱疹の神経痛はいつまで続く?
帯状疱疹後神経痛が起こってしまうと、治療をしないとなかなか治っていきません。
というのは、神経自体が長い距離にわたってズタズタにされていますから、修復も非常に長期間、広範囲に及んでしまうのです。もちろんすぐに治る方もいらっしゃいますが、特に皮疹が広範囲にわたってしまった方を中心に、永続的に痛みが続く方もいらっしゃるのです。
また、ひとは痛みを感じると体に危険な事が起こっていると判断して、更に痛みが加わるとより強く感じる、すなわち痛みによって痛みに敏感になってしまうという特徴があります。
そのため、帯状疱疹後神経痛のように痛みが長期間に及ぶような痛みの場合、だんだんと神経の修復が進んでいって本来であれば痛みを感じない程度にまで改善したとしても、痛みに対して敏感な状態が持続してしまうことで、痛みの感覚が残ってしまうという事もあるのです。
このような事を防ぐため、早期に神経が修復されるようにビタミンB12の投与をする事が重要となりますし、早期から痛みをコントロールすることも重要になるのです。
また、痛みが長く続いた場合には痛みの記憶が形成されますから、神経ブロックが有用になってきます。
個人個人によって状況は異なりますから、ペインクリニックではその人に応じた治療法を選択します。帯状疱疹の後に痛みがある場合には、主治医と相談して早めにペインクリニックに紹介してもらうといいでしょう。
メディコレNEWS編集部まとめ
今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「帯状疱疹後神経痛の対処法」について教えていただきました。
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は一度感染すると、ウイルスは生涯体の中に潜伏し続け、免疫力が低下した時などに、帯状疱疹を発症します。そして帯状疱疹は治癒後に「帯状疱疹後神経痛」という後遺症が残ることがあります。
この帯状疱疹後神経痛の痛みは、通常の痛み止めではなかなか効かず、治療を行わないとなかなか治っていかないという非常に厄介なものです。
こういった痛みに対してはペインクリニックで治療が可能です。気になる症状がある人は早めにペインクリニックを受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
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