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この記事はメディコレ監修医師による監修済みです。
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お腹の調子が悪く検査をしたものの、特段異常が見つからないことがあります。こういった場合に疑われる疾患が「過敏性腸症候群」です。過敏性腸症候群は決して珍しい病気ではありません。現代の日本ではおよそ10人に1人が過敏性腸症候群患者であるといわれています。
過敏性腸症候群では、腹痛や下痢、便秘などの症状で、日常生活に支障をきたすこともあります。しかし適切な治療をすれば、辛い症状の改善や治癒が望めます。この記事では、医師監修のもと過敏性腸症候群の概要や治療方法について詳しく解説していきます。
お腹の調子が悪く検査をしたものの、特段異常が見つからないことがあります。こういった場合に疑われる疾患が「過敏性腸症候群」です。過敏性腸症候群は決して珍しい病気ではありません。現代の日本ではおよそ10人に1人が過敏性腸症候群患者であるといわれています。
過敏性腸症候群では、腹痛や下痢、便秘などの症状で、日常生活に支障をきたすこともあります。しかし適切な治療をすれば、辛い症状の改善や治癒が望めます。この記事では、医師監修のもと過敏性腸症候群の概要や治療方法について詳しく解説していきます。
過敏性腸症候群とは
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過敏性腸症候群とは、腸に病気がないにもかかわらず、慢性的に下痢や便秘といった便通異常、腹痛、腹部膨満感などのおなかの症状がある病気です。
過敏性腸症候群は、ストレスや心理的緊張などが影響していると考えられおり、誰しもが発症する可能性があります。性別で見ると女性患者の方が1.2〜1.7倍ほど多く、年齢では40歳以降減少する傾向があると報告されています。(参考:日本消化器病学会:機能性消化管学会 診療ガイドライン2020 過敏性腸症候群(IBS))
過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、下痢や便秘、腹痛、そして症状が出るかもしれないといった不安などから、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。
過敏性腸症候群の種類
日本消化器病学会のガイドラインでは、過敏性腸症候群は便の性状の割合によって、以下の4つに分類されています
便秘型
硬便または兎糞状便が便形状の25%以上かつ軟便または水様便が便形状の25%未満下痢型
軟便または水様便が便形状の25%以上かつ硬便または兎糞状便が便形状の25%未満混合型
硬便または兎糞状便が便形状の25%以上かつ軟便または水様便が便形状の25%以上分類不能型
便形状の異常が不十分であって、上記3つのいずれでもない
このうち女性では「便秘型」、男性では「下痢型」が多い傾向があります。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群では、慢性的な下痢や便秘、腹痛などの身体的症状と、それらの症状が続くことによるストレスなどから精神的症状があらわれることもあります。
ここでは、前述の過敏性腸症候群の種類にあわせて、それぞれの症状を詳しく解説していきます。
便秘型
過敏性腸症候群の便秘型では、主に以下のような症状があらわれます。
腹痛、腹部不快感
お腹の張り
硬い便による排便困難
過度のいきみ
排便時の会陰部の不快感
頻回の排便、残便感 など
便秘型はもともと便秘がちな女性に多くみられます。便秘が続くことにより、お腹が張る感じがしたり、それにより食欲が低下することもあります。
下痢型
過敏性腸症候群の下痢型では、主に以下のような症状があらわれます。
腹痛
頻回の排便
便意切迫感
腹部不快感
おなら
残便感
お腹の張り など
下痢型では上記のような症状から「急に便意を催したらどうしよう」と不安感を抱く方が多いのが特徴です。そしてこういった不安感により、トイレに行きにくい状況やストレスを感じる状況において、普段以上に症状が起きやすいといった悪循環が生じます。
混合型
過敏性腸症候群の混合型では、便秘と下痢を繰り返します。便秘と下痢は同じ頻度ではなく、便秘が続いたあとに下痢が起きたり、下痢が続いたあとに便秘が起きたりと、どちらかに偏っていながらも両方の症状が出るケースが多いです。
分類不能型
下痢や便秘などの目立った症状は少ないももの、以下のような症状が続く場合は、分類不能型と診断されます。
お腹の張り
お腹がグルグル鳴る
不意に出てしまうおなら など
これらの症状は、ストレスなど心の状態によってあらわれることが多いといわれています。
過敏性腸症候群の原因
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過敏性腸症候群の原因についてはまだ解明されていない部分も多いですが、これまでの研究から精神面と身体面の両方が過敏性腸症候群の発症に関与しているのではないかと考えられています。
精神面の原因
過敏性腸症候群を発症する原因の1つに、ストレスやうつ・不安などの心理的異常が挙げられます。試験や面接など、大事な場面でお腹が痛くなってしまったり、何日か前から便秘や下痢になった、という経験をしたことがある方も少なくないでしょう。これは、ストレスにより自律神経が乱れることで、腸の働きに異常をきたすことが原因です。
こういった腹痛や便異常は一過性のものであれば問題ないのですが、慢性的に症状が続く場合は過敏性腸症候群が疑われます。
身体面の原因
ストレスなどの精神面での原因以外にも、以下のようなことが原因となり腸の働きに異常をきたし、過敏性腸症候群を発症することがあります。
感染性腸炎の既往
特有の腸内細菌が多い
腸のバリア機能低下
食物アレルギー など
特にサルモネア菌やカンピロバクター、ノロウイルスなどの感染性腸炎にかかった方が、回復したあとに過敏性腸症候群を発症するケースが多くみられます。
過敏性腸症候群の治療方法と費用
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過敏性腸症候群の治療は主に消化器内科にて行われます。また発症の原因としてストレスなどの精神面の影響が大きいようであれば、精神科・心療内科での治療が行われることもあります。
ここでは、過敏性腸症候群の治療について①食生活などの生活習慣の改善 ②薬物療法について解説していきます。
生活習慣の改善
過敏性腸症候群と診断された場合は、以下のような生活習慣の改善を心がけましょう。
油脂、香辛料を控える
高FODMAP食(発酵性で、かつ吸収されにくい)をやめる
小麦、たまねぎ、ひよこ豆、りんご、とうもろこし、牛乳、ヨーグルト、はちみつなど規則正しい生活
十分な睡眠や休息
運動をする など
過敏性腸症候群の治療では、できるだけ消化の良い食事を心がけ、腸に負担をかけないようにすることが重要です。また前述の通り、ストレスなどの精神的な影響から過敏性腸症候群を発症するケースが多いため、ストレスをためずに、十分な休息をとることも心がけましょう。
薬物療法
腹痛や下痢・便秘などの症状が強い場合は、薬を服用し、症状の改善を目指します。過敏性腸症候群で使用される薬は主に以下のようなものがあります。
消化管運動機能調整薬:便秘、腹痛、下痢の改善に効果
プロバイオティクス(乳酸菌など):腸内細菌のバランスを改善
漢方薬:腹痛を改善
粘膜上皮機能変容薬:腸管内の水分を多くし、便の軟らかさや輸送機能が促される
5-HT4刺激薬:大腸運動を改善
5-HT3拮抗薬:腹痛、腹部不快感、便意切迫、軟便・下痢を改善 など
また、うつや不安などの精神面の症状があらわれている場合は、抗うつ薬や抗不安薬、心理療法などが行われることがあります。
過敏性腸症候群の治療費
過敏性腸症候群の治療費の目安は以下の通りです。
過敏性腸症候群の治療費目安(3割負担の場合)
初診費:約5,000~1万円(検査費・薬代含む)
再診費:約1,000~3000円
過敏性腸症候群が疑われる症状がある場合、まずは他の病気の可能性を除外するために血液検査や便潜血検査、大腸内視鏡検査などを行うことがあります。これらの検査の結果、特別な異常が見つからない場合に「過敏性腸症候群」と診断されます。
過敏性腸症候群の治療費は一般的に健康保険が適用されますが、心理療法などを行う場合は自費診療となることもあります。
まとめ
過敏性腸症候群は、生活習慣の改善と薬物療法により数週間~数か月程度で改善していくケースもあれば、心理療法が必要となり数年単位の治療期間を要するケースもあります。
腹痛や下痢・便秘などの症状は、日常生活に支障をきたすこともあるため、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
過敏性腸症候群とは
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過敏性腸症候群とは、腸に病気がないにもかかわらず、慢性的に下痢や便秘といった便通異常、腹痛、腹部膨満感などのおなかの症状がある病気です。
過敏性腸症候群は、ストレスや心理的緊張などが影響していると考えられおり、誰しもが発症する可能性があります。性別で見ると女性患者の方が1.2〜1.7倍ほど多く、年齢では40歳以降減少する傾向があると報告されています。(参考:日本消化器病学会:機能性消化管学会 診療ガイドライン2020 過敏性腸症候群(IBS))
過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、下痢や便秘、腹痛、そして症状が出るかもしれないといった不安などから、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。
過敏性腸症候群の種類
日本消化器病学会のガイドラインでは、過敏性腸症候群は便の性状の割合によって、以下の4つに分類されています
便秘型
硬便または兎糞状便が便形状の25%以上かつ軟便または水様便が便形状の25%未満下痢型
軟便または水様便が便形状の25%以上かつ硬便または兎糞状便が便形状の25%未満混合型
硬便または兎糞状便が便形状の25%以上かつ軟便または水様便が便形状の25%以上分類不能型
便形状の異常が不十分であって、上記3つのいずれでもない
このうち女性では「便秘型」、男性では「下痢型」が多い傾向があります。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群では、慢性的な下痢や便秘、腹痛などの身体的症状と、それらの症状が続くことによるストレスなどから精神的症状があらわれることもあります。
ここでは、前述の過敏性腸症候群の種類にあわせて、それぞれの症状を詳しく解説していきます。
便秘型
過敏性腸症候群の便秘型では、主に以下のような症状があらわれます。
腹痛、腹部不快感
お腹の張り
硬い便による排便困難
過度のいきみ
排便時の会陰部の不快感
頻回の排便、残便感 など
便秘型はもともと便秘がちな女性に多くみられます。便秘が続くことにより、お腹が張る感じがしたり、それにより食欲が低下することもあります。
下痢型
過敏性腸症候群の下痢型では、主に以下のような症状があらわれます。
腹痛
頻回の排便
便意切迫感
腹部不快感
おなら
残便感
お腹の張り など
下痢型では上記のような症状から「急に便意を催したらどうしよう」と不安感を抱く方が多いのが特徴です。そしてこういった不安感により、トイレに行きにくい状況やストレスを感じる状況において、普段以上に症状が起きやすいといった悪循環が生じます。
混合型
過敏性腸症候群の混合型では、便秘と下痢を繰り返します。便秘と下痢は同じ頻度ではなく、便秘が続いたあとに下痢が起きたり、下痢が続いたあとに便秘が起きたりと、どちらかに偏っていながらも両方の症状が出るケースが多いです。
分類不能型
下痢や便秘などの目立った症状は少ないももの、以下のような症状が続く場合は、分類不能型と診断されます。
お腹の張り
お腹がグルグル鳴る
不意に出てしまうおなら など
これらの症状は、ストレスなど心の状態によってあらわれることが多いといわれています。
過敏性腸症候群の原因
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過敏性腸症候群の原因についてはまだ解明されていない部分も多いですが、これまでの研究から精神面と身体面の両方が過敏性腸症候群の発症に関与しているのではないかと考えられています。
精神面の原因
過敏性腸症候群を発症する原因の1つに、ストレスやうつ・不安などの心理的異常が挙げられます。試験や面接など、大事な場面でお腹が痛くなってしまったり、何日か前から便秘や下痢になった、という経験をしたことがある方も少なくないでしょう。これは、ストレスにより自律神経が乱れることで、腸の働きに異常をきたすことが原因です。
こういった腹痛や便異常は一過性のものであれば問題ないのですが、慢性的に症状が続く場合は過敏性腸症候群が疑われます。
身体面の原因
ストレスなどの精神面での原因以外にも、以下のようなことが原因となり腸の働きに異常をきたし、過敏性腸症候群を発症することがあります。
感染性腸炎の既往
特有の腸内細菌が多い
腸のバリア機能低下
食物アレルギー など
特にサルモネア菌やカンピロバクター、ノロウイルスなどの感染性腸炎にかかった方が、回復したあとに過敏性腸症候群を発症するケースが多くみられます。
過敏性腸症候群の治療方法と費用
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過敏性腸症候群の治療は主に消化器内科にて行われます。また発症の原因としてストレスなどの精神面の影響が大きいようであれば、精神科・心療内科での治療が行われることもあります。
ここでは、過敏性腸症候群の治療について①食生活などの生活習慣の改善 ②薬物療法について解説していきます。
生活習慣の改善
過敏性腸症候群と診断された場合は、以下のような生活習慣の改善を心がけましょう。
油脂、香辛料を控える
高FODMAP食(発酵性で、かつ吸収されにくい)をやめる
小麦、たまねぎ、ひよこ豆、りんご、とうもろこし、牛乳、ヨーグルト、はちみつなど規則正しい生活
十分な睡眠や休息
運動をする など
過敏性腸症候群の治療では、できるだけ消化の良い食事を心がけ、腸に負担をかけないようにすることが重要です。また前述の通り、ストレスなどの精神的な影響から過敏性腸症候群を発症するケースが多いため、ストレスをためずに、十分な休息をとることも心がけましょう。
薬物療法
腹痛や下痢・便秘などの症状が強い場合は、薬を服用し、症状の改善を目指します。過敏性腸症候群で使用される薬は主に以下のようなものがあります。
消化管運動機能調整薬:便秘、腹痛、下痢の改善に効果
プロバイオティクス(乳酸菌など):腸内細菌のバランスを改善
漢方薬:腹痛を改善
粘膜上皮機能変容薬:腸管内の水分を多くし、便の軟らかさや輸送機能が促される
5-HT4刺激薬:大腸運動を改善
5-HT3拮抗薬:腹痛、腹部不快感、便意切迫、軟便・下痢を改善 など
また、うつや不安などの精神面の症状があらわれている場合は、抗うつ薬や抗不安薬、心理療法などが行われることがあります。
過敏性腸症候群の治療費
過敏性腸症候群の治療費の目安は以下の通りです。
過敏性腸症候群の治療費目安(3割負担の場合)
初診費:約5,000~1万円(検査費・薬代含む)
再診費:約1,000~3000円
過敏性腸症候群が疑われる症状がある場合、まずは他の病気の可能性を除外するために血液検査や便潜血検査、大腸内視鏡検査などを行うことがあります。これらの検査の結果、特別な異常が見つからない場合に「過敏性腸症候群」と診断されます。
過敏性腸症候群の治療費は一般的に健康保険が適用されますが、心理療法などを行う場合は自費診療となることもあります。
まとめ
過敏性腸症候群は、生活習慣の改善と薬物療法により数週間~数か月程度で改善していくケースもあれば、心理療法が必要となり数年単位の治療期間を要するケースもあります。
腹痛や下痢・便秘などの症状は、日常生活に支障をきたすこともあるため、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
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中路 幸之助
(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
医師のコメント
自分で症状から判断して、過敏性腸症候群ではないかと思っていても、実際は大腸癌や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)である場合もあり注意を要します。消化管専門の医療機関を受診し検査(血液検査・腹部エコー/CT検査・大腸内視鏡検査)を受けて、診断をしてもらいましょう。また甲状腺機能異常や糖尿病などの全身疾患、腸管の感染症、薬剤(一部の降圧剤等)でも同様の症状がでる場合があり、鑑別診断が重要です。また過敏性腸症候群の原因のは特定は困難ですが、脳と腸の関連(脳腸相関)が指摘されており、日常生活におけるストレスをどのように回避するかの工夫をしていくことが重要と考えられます。
医師のコメント
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中路 幸之助
(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)
自分で症状から判断して、過敏性腸症候群ではないかと思っていても、実際は大腸癌や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)である場合もあり注意を要します。消化管専門の医療機関を受診し検査(血液検査・腹部エコー/CT検査・大腸内視鏡検査)を受けて、診断をしてもらいましょう。また甲状腺機能異常や糖尿病などの全身疾患、腸管の感染症、薬剤(一部の降圧剤等)でも同様の症状がでる場合があり、鑑別診断が重要です。また過敏性腸症候群の原因のは特定は困難ですが、脳と腸の関連(脳腸相関)が指摘されており、日常生活におけるストレスをどのように回避するかの工夫をしていくことが重要と考えられます。
事例の紹介
医師監修の専門メディア メディコレNEWS
メディコレNEWSは、医師監修の方法や対象になるコンテンツの種類、メリットなどの情報をお伝えする、医師監修の専門メディアです。医師の専門性や信頼性をプラスして、コンバージョンを最大化するための情報をお伝えします。
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