痛みに強い人と弱い人がいるのはどうして?麻酔科医が解説

2023.10.12

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監修医師:郷 正憲(徳島赤十字病院)
保有免許・資格は日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。主な著書は『看護師と研修医のための全身管理の本』。

同じような痛みを与えられてもいたがる人もいれば、痛がらない人もいます。この差はどうして起こってくるのでしょうか。

そんな疑問を解決するため、今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「痛みに強い人と弱い人がいる理由」について教えていただきます。

痛みに強い人と弱い人がいるのはどうして?

痛みに強い人と弱い人がいるのはどうしてでしょうか。
じつはこれに対するはっきりとした答えはありません。

痛みの感じ方というのは個人差が大きく、様々な要因によって決まってくるため、これが原因で痛みの感じ方が違うんだ、という結論を出すことができないからなのです。

では、どのような要因が考えられているのでしょうか。

心理的要因

1つ目は心理的な理由です。脳が感じた痛みが同じ程度だったとしても、痛みに対して不安が強い人はより強い痛みを感じるようになります。

これは同じ人であっても状況によって痛みの感じ方が異なってくるのと同じ理由になります。はつらつとして元気なときには痛みをあまり感じないのに、不安で陰鬱な時には痛みを感じてしまいます。

この痛みの感じ方の心理的な要因には、自律神経系も関わっていると考えられています。交感神経が活性化されると、痛みに対してある程度鈍感になると言われています。多少の痛みでは身体活動は妨げられないのです。

ですので、痛みを感じにくい人というのは普段から交感神経が活性化しやすい人と言うのもあるのかもしれません。

下行抑制系の個人差

2つ目の理由は、脳自体が痛みに敏感かどうかと言う理由です。もともと、人の脳というのは痛みを強く感じるようにできています。

あまり痛みを感じすぎてしまうと社会生活が困難になってしまいますから、脳は痛みをある程度以上は感じなくても言いようにブレーキをかけます。これを「下行抑制系」と言います。
この下行抑制系はその人個人の中でも、状況によって強く働いたり弱く働いたり変わることが分かっています。

そのため、下行抑制系の程度に個人差があるとすれば、個人個人で痛みの感じ方が違う理由となり得るでしょう。

痛みのセンターの密度

3つ目の理由は、痛みのセンサーの密度が個人によって違うのではないかという事が言われています。皮膚など身体の様々な場所には痛みのセンサーがあります。

センサーは非常に小さいもので、体中に配置されています。このセンサーの密度が個人個人によって差があるのではないかと言うことが言われているのです。 これらの理由で痛みの感じ方に個人差があるのではないかと言われていますが、結論は出ていません。

男性は女性より痛みに弱いって本当?

これもよく言われることですが、男性は女性より痛みに弱いということは本当なのでしょうか。

こちらも痛みの感じ方と同じで、男性と女性で痛みの感じ方がどう違うのかという理由は分かっていませんが、どうも女性の方が痛みに強いというのは一般的によくられる現象のようです。

おそらく女性の方が出産という非常に強い痛みを経験しているため脳が痛みを感じにくくなっているのであろう、というのはよく言われることですが、出産に関係なく痛みに強い女性は多くいらっしゃいます。
もしかしたら前述の痛みを感じにくい条件というのが女性には元々備わっているのかもしれません

まだまだ解明されていない人体の不思議というのがそこにはあるのかもしれません。

まとめ

今回は麻酔科医の郷 正憲先生に「痛みに強い人と弱い人がいる理由」について教えていただきました。

痛みの感じ方には個人差がありますが、はっきりした理由についてはいまだ分かっていない部分が多いのです。

一般的には、①心理的要因 ②下行抑制系の個人差 ③痛みのセンターの密度 などの要因が あると考えられています。