株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、千葉大学大学院医学研究院精神医学特任助教の、大迫鑑顕先生にお話を伺いました。

株式会社メディコレが目指す、誰もが安心できる医療情報に触れることができる社会には、情報を監修する医師の力が欠かせません。今回は、千葉大学大学院医学研究院精神医学特任助教の、大迫鑑顕先生にお話を伺いました。

「生き方を支える医療を実現したい」精神科医としての思い
――本日はお時間いただきありがとうございます!まず初めに、先生が医師を志した理由を教えてください。
大迫先生 私が医師の道を志したのは2つの理由があります。1つ目の理由は環境です。最初に医師という選択肢を意識したのは高校生の時でした。当時はまだ将来のことを漠然と考えていましたが、私が通っていたラ・サール高等学校では医師になる同級生が多かったことと、私の父親も同じラ・サール高等学校を卒業して千葉大学に進学し、精神科医になっていることに影響を受けました。
もう1つの理由は、南米のコロンビアに3ヶ月の短期留学に行った経験です。私は、実は1回大学で留年しています。当時の私のとっては、絶望的な体験でした。もう1回同じ勉強をやらないといけない時に、頑張るきっかけをつかみたいと思ってコロンビアに3ヶ月の語学留学に行きました。コロンビアでは貧富の差が激しい様子を目の当たりにしたのですが、貧しい方と交流する機会があったときに、汚いボロボロの家に住んでいるにもかかわらず、子供たちがとても楽しそうにニコニコ笑っていたんです。豊かな日本で留年して落ち込んでいた当時の私にとっては、「何でこんなところで生きていて幸せそうなんだろう?」ととても興味深く感じました。幸福を知るために精神科医として、色々な人と関わることは面白いのではないかと思ったのです。
――コロンビアの人々との交流が精神科医を目指すきっかけになったのは大変興味深いです。高校生の時の思いを貫いて精神科を専門にした理由はありますか?
大迫先生 医学部で勉強をする中で、頭に入ってきやすかったのが精神科に関することでした。内容が純粋に面白いと思ったのです。また、内科や外科は検査によって数値や画像がしっかり出てくるので、ガイドラインや治療法がある程度定まってますので、医師の個性を活かしにくいのではないかと感じていました。私は高校生でコロンビアに短期留学に行ったことからわかるように、語学や旅行が好きで、学生の頃は色々な場所に行きました。そういう経験やバックグラウンドを活かして人と関わることができる精神科が面白いと思ったので、精神科医の道に進みました。
――先生はスペインのバルセロナの病院で研究をしていますが、研究内容を教えていただけますか?

大迫先生 私が最初に始めた研究は、摂食障害、特に過食症についてです。具体的には、過食症の人に対するオンラインガイドセルフヘルプ認知行動療法の開発などを行ってきました。認知行動療法は、1回1時間や30分のセッションを10〜15セッション行いますが、保険でも一部認められているものの、自由診療 では1回あたり1万円ほどの金額がかかります。過食症は患者が自分の病気が治療が必要だと認識しづらい疾患なので、費用も時間もかかる治療法では途中で脱落する方も少なくありません。そこで、もう少し簡単な治療として開発されたのがガイドセルフヘルプ認知行動療法です。
ガイドセルフヘルプ認知行動療法は、その字の通り、ガイド付きで自助の治療を行うものです。家庭教師が付き添いながら生徒が自分でドリルに取り組むようなイメージを持ってもらうとわかりやすいかと思います。研究ベースでは、認知行動療法と同じぐらいの効果があると言われています。
現在働いているバルセロナでは、摂取障害だけではなく、ギャンブル依存症やゲーム依存症などの行動障害全般の研究を行っています。
――先生が研究で大事にしていることはありますか?
大迫先生 同じような内容で論文のテーマを与えられると、どうしても他の医師と同じような研究内容になりがちです。同じようなアイディアの論文を2番目や3番目に出しても、あまり価値がないと思っています。臨床医として経験を積むと、逆にステレオタイプの考え方に陥りがちです。研究現場では、そういうステレオタイプな考え方を1回捨てないと新しい発想が出てこないと思います。しかし、実際にはゼロベースで考えることは、かなり難しいことです。そういう時には、他の職種の人に会ったり、色々なところに行って視野を広げることが大事だと思っています。メディコレでの仕事も普段の研究とは違う環境に身を置き、発想の転換作業の1つです。
――先生には普段からメディコレWEBで医師監修にご協力いただいちえますが、医療・ヘルスケア情報の発信に医師が関わる重要性を教えてください。
大迫先生 世の中全体の流れとして、SNSを通じて受け身でも情報が入ってくる環境です。そうした中で、悪意の有無に関わらずキャッチーなフレーズのフェイクニュースが流れてきます。全体的な医学知識を踏まえて、かつ伝えるべき情報の重さを判断した上で適切に伝えていくことが非常に大事なことだと思っています。そのためには、対象となる医療分野の専門家に確認しながら情報発信をする必要性があると思います。
――先生のVISIONを教えてください。

大迫先生 私が医師としての活動の先に描いるのは、「こころとからだの健康が等しく尊重される社会」、そして「誰もが安心して生きられる居場所をもつ世界」です。日本での地域医療に携わる中で実感しているのは、心の問題が、地域のつながりや医療との距離によって、見過ごされたり孤立を深めたりしている現状です。特に地方では、精神科へのアクセスの難しさや、精神的不調を語りにくい文化が、受診のハードルを高くしています。私は、地域に根差した精神科医として、「心理的安全性のある社会」をつくる一助になりたいと考えています。それは、病院という限られた空間の中だけでなく、学校、職場、家庭、そして地域全体が、こころの健康について語れるような土壌を耕していくことでもあります。
また、海外での経験や語学力を活かし、「多文化間メンタルヘルス支援」にも力を入れたいと考えています。言葉や文化の壁によって、適切な支援からこぼれ落ちている在留外国人、海外駐在員、その家族のメンタルヘルスを支える仕組みを築いていきたいです。医師として、国境や文化、制度の違いにかかわらず「一人ひとりの苦しみに寄り添うこと」が、グローバルな社会の中で求められる医療の姿だと信じています。
最終的には、医療が「治す」場であるだけでなく、「生き方を支える」場へと進化していくことだ大事だと思います。人と人とのつながりの中で回復していけるようなコミュニティの形成や、予防・教育・ケアがシームレスにつながる仕組みを実現したいと考えています。
――最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
大迫先生 精神疾患というと、うつ病や統合失調症など大きく構えがちですが、 メンタルの不調は、誰でもストレスによって容易になり得るものです。私も海外生活が1年ほど経った頃に、日本に無性に帰りたくなり、「もうダメ・・・」とかなり悲観的な気持ちになることがありました。
環境が変わると精神状態はストレスを受けやすくなるので、 誰しも同様の問題を抱える可能性があります。精神科でのカウンセリングや相談には、できるだけ早く気軽に行っていただいた方が、問題が大きくなる前に解消できる可能性があることを知っていただきたいです。
「生き方を支える医療を実現したい」精神科医としての思い
――本日はお時間いただきありがとうございます!まず初めに、先生が医師を志した理由を教えてください。
大迫先生 私が医師の道を志したのは2つの理由があります。1つ目の理由は環境です。最初に医師という選択肢を意識したのは高校生の時でした。当時はまだ将来のことを漠然と考えていましたが、私が通っていたラ・サール高等学校では医師になる同級生が多かったことと、私の父親も同じラ・サール高等学校を卒業して千葉大学に進学し、精神科医になっていることに影響を受けました。
もう1つの理由は、南米のコロンビアに3ヶ月の短期留学に行った経験です。私は、実は1回大学で留年しています。当時の私のとっては、絶望的な体験でした。もう1回同じ勉強をやらないといけない時に、頑張るきっかけをつかみたいと思ってコロンビアに3ヶ月の語学留学に行きました。コロンビアでは貧富の差が激しい様子を目の当たりにしたのですが、貧しい方と交流する機会があったときに、汚いボロボロの家に住んでいるにもかかわらず、子供たちがとても楽しそうにニコニコ笑っていたんです。豊かな日本で留年して落ち込んでいた当時の私にとっては、「何でこんなところで生きていて幸せそうなんだろう?」ととても興味深く感じました。幸福を知るために精神科医として、色々な人と関わることは面白いのではないかと思ったのです。
――コロンビアの人々との交流が精神科医を目指すきっかけになったのは大変興味深いです。高校生の時の思いを貫いて精神科を専門にした理由はありますか?
大迫先生 医学部で勉強をする中で、頭に入ってきやすかったのが精神科に関することでした。内容が純粋に面白いと思ったのです。また、内科や外科は検査によって数値や画像がしっかり出てくるので、ガイドラインや治療法がある程度定まってますので、医師の個性を活かしにくいのではないかと感じていました。私は高校生でコロンビアに短期留学に行ったことからわかるように、語学や旅行が好きで、学生の頃は色々な場所に行きました。そういう経験やバックグラウンドを活かして人と関わることができる精神科が面白いと思ったので、精神科医の道に進みました。
――先生はスペインのバルセロナの病院で研究をしていますが、研究内容を教えていただけますか?

大迫先生 私が最初に始めた研究は、摂食障害、特に過食症についてです。具体的には、過食症の人に対するオンラインガイドセルフヘルプ認知行動療法の開発などを行ってきました。認知行動療法は、1回1時間や30分のセッションを10〜15セッション行いますが、保険でも一部認められているものの、自由診療 では1回あたり1万円ほどの金額がかかります。過食症は患者が自分の病気が治療が必要だと認識しづらい疾患なので、費用も時間もかかる治療法では途中で脱落する方も少なくありません。そこで、もう少し簡単な治療として開発されたのがガイドセルフヘルプ認知行動療法です。
ガイドセルフヘルプ認知行動療法は、その字の通り、ガイド付きで自助の治療を行うものです。家庭教師が付き添いながら生徒が自分でドリルに取り組むようなイメージを持ってもらうとわかりやすいかと思います。研究ベースでは、認知行動療法と同じぐらいの効果があると言われています。
現在働いているバルセロナでは、摂取障害だけではなく、ギャンブル依存症やゲーム依存症などの行動障害全般の研究を行っています。
――先生が研究で大事にしていることはありますか?
大迫先生 同じような内容で論文のテーマを与えられると、どうしても他の医師と同じような研究内容になりがちです。同じようなアイディアの論文を2番目や3番目に出しても、あまり価値がないと思っています。臨床医として経験を積むと、逆にステレオタイプの考え方に陥りがちです。研究現場では、そういうステレオタイプな考え方を1回捨てないと新しい発想が出てこないと思います。しかし、実際にはゼロベースで考えることは、かなり難しいことです。そういう時には、他の職種の人に会ったり、色々なところに行って視野を広げることが大事だと思っています。メディコレでの仕事も普段の研究とは違う環境に身を置き、発想の転換作業の1つです。
――先生には普段からメディコレWEBで医師監修にご協力いただいちえますが、医療・ヘルスケア情報の発信に医師が関わる重要性を教えてください。
大迫先生 世の中全体の流れとして、SNSを通じて受け身でも情報が入ってくる環境です。そうした中で、悪意の有無に関わらずキャッチーなフレーズのフェイクニュースが流れてきます。全体的な医学知識を踏まえて、かつ伝えるべき情報の重さを判断した上で適切に伝えていくことが非常に大事なことだと思っています。そのためには、対象となる医療分野の専門家に確認しながら情報発信をする必要性があると思います。
――先生のVISIONを教えてください。

大迫先生 私が医師としての活動の先に描いるのは、「こころとからだの健康が等しく尊重される社会」、そして「誰もが安心して生きられる居場所をもつ世界」です。日本での地域医療に携わる中で実感しているのは、心の問題が、地域のつながりや医療との距離によって、見過ごされたり孤立を深めたりしている現状です。特に地方では、精神科へのアクセスの難しさや、精神的不調を語りにくい文化が、受診のハードルを高くしています。私は、地域に根差した精神科医として、「心理的安全性のある社会」をつくる一助になりたいと考えています。それは、病院という限られた空間の中だけでなく、学校、職場、家庭、そして地域全体が、こころの健康について語れるような土壌を耕していくことでもあります。
また、海外での経験や語学力を活かし、「多文化間メンタルヘルス支援」にも力を入れたいと考えています。言葉や文化の壁によって、適切な支援からこぼれ落ちている在留外国人、海外駐在員、その家族のメンタルヘルスを支える仕組みを築いていきたいです。医師として、国境や文化、制度の違いにかかわらず「一人ひとりの苦しみに寄り添うこと」が、グローバルな社会の中で求められる医療の姿だと信じています。
最終的には、医療が「治す」場であるだけでなく、「生き方を支える」場へと進化していくことだ大事だと思います。人と人とのつながりの中で回復していけるようなコミュニティの形成や、予防・教育・ケアがシームレスにつながる仕組みを実現したいと考えています。
――最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
大迫先生 精神疾患というと、うつ病や統合失調症など大きく構えがちですが、 メンタルの不調は、誰でもストレスによって容易になり得るものです。私も海外生活が1年ほど経った頃に、日本に無性に帰りたくなり、「もうダメ・・・」とかなり悲観的な気持ちになることがありました。
環境が変わると精神状態はストレスを受けやすくなるので、 誰しも同様の問題を抱える可能性があります。精神科でのカウンセリングや相談には、できるだけ早く気軽に行っていただいた方が、問題が大きくなる前に解消できる可能性があることを知っていただきたいです。
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